【まとめ】 嫌われる勇気, 岸見一郎・古賀史健 著



読んだ本のこと

情報科学:00

ジャーナリズム:00

哲学:10

歴史:20

社会科学:30

自然科学:40

技術,工学:50

産業:60

文学:90

公開日:2024/7/5    

■本、著者の情報
<作者>岸見一郎・古賀史健
<発行日>2013年12月 ダイヤモンド社

■感想

オーストリア出身の精神科医アルフレッド・アドラーの思想を一冊に凝縮したという売り込みの本。極論がとても多く、本当にアドラーの考えなのか著者が意訳したものなのか、読み進めていくうちに疑念が湧いてきたので、アドラーの原書の方を読むべきだったと少し後悔しました。

本の構成は哲学者と青年の対話方式をとっておりますが、これはプラトンの著書の構成を真似たものであると思われます。 ただしプラトンの対話編は、ソクラテスの人柄がよくわかるユーモアに溢れた内容となっており、読み手を飽きさせることの無い内容になっていますが、本書の対話はあまり中身のない会話がだらだらと続くため、対話にすることの良さを感じることが出来ませんでした。 哲人の答えになっていない説明で青年が納得するのも謎です。

なお、過去のトラウマを否定し、自分が不幸なのは自らの手で「不幸であること」を選んだからであるという著者の主張は、極論すぎてそのままでは受け入れがたいですが、「過去の出来事含め、物事は全て自分の解釈によって出来ている」と捉えると少し前向きになれるのではないかと思います。

■要点

<原因論と目的論>
原因論とは、過去の出来事が現在の状況を作っているという考え方のこと。目的論とは、人は何かの目的のために今の状況を作り出しているという考え方のこと。

例えば「自分は両親に虐待を受けたために、社会に適合できない状態になっている」と考えるのは原因論の考えで、「他人に心配してもらいたいという目的のために、社会に適合できない状態を作り出している」と考えるのが目的論の考え方です。

アドラーは原因論によって人間の行動/状態が決定されるのではなく、目的論によって人間の行動/状態が決定されるとしています。

<全ての悩みは対人関係の悩みである>
対人関係の軸に「競争」があると、人は対人関係の悩みから逃れられず、不幸から逃げることが出来ない。 人間にとっての目標は以下があり、これらの目標は「人生のタスク(仕事のタスク,交友のタスク,愛のタスク)」と向き合うことで達成できる。

<行動面の目標>
 ・自立すること
 ・社会と調和して暮らせること
<行動を支える心理面の目標>
 ・わたしには能力がある、という意識
 ・人々はわたしの仲間である、という意識


その他、主に対人関係に関する印象に残った事を以下に示します (納得したかどうかは別にして)。

・怒りは出し入れ可能な「道具」である

・大切なのは何が与えられているかではなく、与えられたものをどう使うか

・自分が変われないのは、自らに対して「変わらない」という決心を下しているから

・これまでの人生に何があったとしても、今後の人生をどう生きるかについて何の影響もない

・人は「この人と一緒にいると、とても自由に振る舞える」と思えたとき、愛を実感する事ができる

・Aさんの欠点が許せないから嫌っているのではなく、Aさんのことを嫌いになるという目的が先にあって、その目的にかなった欠点を後から見つけている。その理由はAさんとの対人関係を回避するため

・相手がさしたる理由もなく罵倒してくる場合、それは権力争いを挑んできているので絶対に乗ってはならない。言葉によるコミュニケーションを取る必要がある。

・我々は他社の期待を満たすために生きているのではない

・自分の課題と他者の課題を分離し、たとえ家族であっても他者の課題には踏み込まない

・自由とは他社から嫌われること (他社のことばかり気にして不自由な人生を送るくらいなら、嫌われても自由な人生を送る方が良い)

・他者を「行為のレベル」で受け入れるのではなく「存在のレベル」で受け入れる

・対人関係のゴールは「共同体感覚」 対人関係の中で困難にぶつかったとき、出口が見えなくなってしまったときに、まず考えるべきは「より大きな共同体の声を聴く」

・縦の関係ではなく、横の関係を作る

・相手を褒めるのではなく、感謝を伝える

・人は感謝の言葉を聞いたとき、自らが他社に貢献できたことを知る

・「自己への執着」をやめて「他人への関心」に切り替えよ

・我々は何かの能力が足りていないのではなく、ただ勇気が足りていないだけ

・仕事の本質は、他者への貢献

・他者を仲間と見なすと「ここにいてもいいんだ」という所属感を得ることができる。

・ありのままの自分を受け入れる「自己受容する」⇒裏切りを恐れることなく「他者信頼」する事ができる⇒他者に無条件の信頼を寄せて、人々は自分の仲間だと思えているからこそ、「他者貢献」できる ⇒他者貢献するからこそ、「私は誰かの役にたっている」と実感し、ありのままの自分を受け入れることができる

・人生における最大の嘘、それは「いま、ここ」を生きないこと。過去を見て、未来を見て、人生全体にぼんやりとした光を当てて、何か見えたつもりになること。

<幸福とは>
幸福とは貢献感である。しかし貢献感を得るための手段が「他者から承認されること」になってしまうと、結局は他社の望み通りの人生を歩まざるをえない。承認欲求を通じて得られた貢献感には自由はない。 本当に貢献感が持てているなら、他者からの承認はいらない。




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情報科学:00

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