 芥見下々
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■呪術廻戦
<本の情報>
・ 出版社:集英社
・ 作者:芥見下々
・ 連載期間:2018年 - 2024年
・ 巻数:全30巻
■登場人物
・虎杖悠仁
並外れた身体能力を持つ都立呪術高専1年生。
特級呪物「宿儺の指」を飲み込んだことで千年に一人とされる「宿儺の器」となり、五条悟の導きで呪術師となる。
祖父の遺言から「正しい死」と人命救助を信条とし、仲間や一般人を守るため命懸けで戦い続ける。
東堂葵や七海建人らとの出会いを通じて黒閃、反転術式、領域展開などを習得し、術師として大きく成長した。
渋谷事変では宿儺による大量虐殺や仲間の死に苦しみながらも立ち上がり、死滅回游では羂索の計画阻止に奔走。
そして人外魔境新宿決戦では宿儺との最終決戦に挑み、伏黒恵を救いながら宿儺を打ち破り、長きにわたる呪いとの戦いに終止符を打った。
・伏黒恵
都立呪術高専1年生で虎杖悠仁の同級生。
御三家・禪院家の血を引き、「十種影法術」を操る実力者である。
義姉・津美紀を救いたいという思いから、「善人が報われる世界」を目指して呪術師となり、自らの信念に基づいて人を救う。
虎杖との出会いを機に行動を共にし、交流会や渋谷事変で数々の激戦を経験する中で、不完全ながら領域展開を習得するなど大きく成長した。
死滅回游では津美紀を救うため戦うが、姉の身体が古代術師・万に乗っ取られていたことに絶望した隙を突かれ、宿儺の新たな器となってしまう。
人外魔境新宿決戦では虎杖の呼びかけによって精神を取り戻し、宿儺の行動を内側から妨害。宿儺撃破後は生還し、仲間とともに呪術師として歩み続ける。
・釘崎野薔薇
都立呪術高専1年生の3級呪術師で、東京に憧れて田舎を離れてきた少女。
サバサバした性格で口は悪いが、危険を顧みず人を助ける優しさと強い信念を持つ。
五寸釘と金槌を使う「芻霊呪法」を操り、虎杖・伏黒と共に戦う中で黒閃を経験し、呪胎九相図を撃破した。
渋谷事変では真人に左顔面を吹き飛ばされ生死不明となるが、新田新の応急処置で一命を取り留める。
人外魔境新宿決戦では土壇場で意識を取り戻し、最後の宿儺の指へ共鳴りを打ち込んで決定打を与えた。
その後も呪術師として活動を続けている。
・五条悟
都立呪術高専の教師であり、御三家・五条家当主を務める「現代最強の呪術師」。
希少な「六眼」と「無下限呪術」を備え、圧倒的な実力で呪術界の均衡を支える存在である。
一方で性格は飄々として自由奔放だが、呪術界の改革と次世代の育成を信念とし、虎杖や伏黒ら生徒たちを導く良き教師でもある。
高専時代には親友・夏油傑との決別を経て真の最強へと覚醒した。
渋谷事変では羂索の策略によって獄門疆に封印されるが、死滅回游後に解放され、宿儺との最終決戦に挑む。
互角の激闘の末、「世界を断つ斬撃」に敗れて命を落とすも、その死は仲間たちへ未来を託す大きな礎となった。
■あらすじ
<呪術高専編>
人間の負の感情から生まれる化け物「呪霊」が人知れず人々を脅かす世界。
並外れた身体能力を持つ高校生・虎杖悠仁は、病院に入院する祖父と過ごしながら平穏な日々を送っていた。
しかし祖父が「お前は大勢に囲まれて死ね」という言葉を遺してこの世を去った夜、虎杖の通う高校で強力な呪物「両面宿儺の指」の封印が解かれ、多くの呪霊が集まり始める。
仲間を救うため校舎へ向かった虎杖は窮地に陥り、自ら宿儺の指を飲み込んで圧倒的な力を手にする。だが、その代償として千年前に存在した最強の呪い・両面宿儺の器となってしまう。
虎杖は呪術界から死刑を宣告されるが、最強の呪術師・五条悟の提案により、「すべての宿儺の指を取り込んだ後に処刑する」という条件で猶予を与えられ、東京都立呪術高等専門学校へ入学する。
そこで伏黒恵、釘崎野薔薇とチームを組み、呪霊を祓う任務に就くこととなる。
最初の大きな任務では、少年院に現れた特級呪霊との戦いで実力差を痛感する。
仲間を守るため宿儺に肉体を明け渡した虎杖だったが、宿儺は約束を無視して暴走し、虎杖は命を落としてしまう。
しかし宿儺との「縛り」によって蘇生した虎杖は、自身の生存を伏せたまま五条から特訓を受け、呪力の扱いや戦い方を学びながら着実に成長していく。
一方その頃、かつて呪術界を震撼させた呪詛師・夏油傑と思われる人物が、特級呪霊の漏瑚・花御・真人らと手を組み、水面下である計画を進めていた。
その目的は、呪術界最強である五条悟を封印することだった。彼らは各地で事件を起こしながら力を蓄え、その時が来るのを待っていた。
虎杖は一級呪術師・七海建人と共に、特級呪霊・真人が引き起こす連続変死事件の調査に当たる。
そこで出会った高校生・吉野順平は、学校でのいじめに苦しみ、真人の言葉に心を揺さぶられていた。虎杖は順平を救おうと懸命に手を差し伸べるが、その思いも虚しく、順平は真人によって命を奪われる。
人の命を弄ぶ真人への怒りは、虎杖が呪術師として戦う強い決意を固めるきっかけとなった。
続いて開催された京都姉妹校交流会では、東京校と京都校の生徒たちが交流を兼ねた対抗戦を繰り広げる。
当初は虎杖抹殺を命じられていた京都校だったが、個性豊かな呪術師同士の激突や、東堂葵による厳しくも熱い指導を通じて、虎杖はさらに実力を伸ばしていく。
しかし交流会の最中、花御ら敵勢力が高専を急襲。東京校・京都校の垣根を越えた共闘が実現し、最後は五条の圧倒的な力によって敵は撤退するものの、高専が保管していた宿儺の指などの呪物は奪われてしまう。
その後、虎杖・伏黒・釘崎は、伏黒の姉・津美紀にも関係する連続怪死事件の調査に赴く。
事件の裏では宿儺の指を取り込んだ特級呪霊と呪胎九相図の兄弟が暗躍していた。虎杖と釘崎は息の合った連携で壊相・血塗を撃破し、伏黒も極限状態の中で自らの可能性を切り開く戦いを見せる。
この活躍により、虎杖たちは一級呪術師への推薦を受けることとなった。
さらに物語は過去へ遡り、五条悟と夏油傑が親友だった高専時代が描かれる。星漿体・天内理子の護衛任務で「術師殺し」伏黒甚爾に敗北したこと、理子の死、
そして非術師への失望や仲間の死を経験した夏油は、「呪術師だけの世界を作る」という思想へ傾倒し、呪詛師となって呪術高専を去る。
一方の五条は、自ら一人で背負うのではなく、未来を託せる強い仲間を育てることを決意する。この決別は、現在へと続く二人の因縁の原点となった。
やがて京都校の与幸吉(三輪たちの仲間であるメカ丸)が、長年にわたり敵側へ情報を流していた内通者だったことが判明する。
病弱な身体を治す代償として敵と「縛り」を交わしていた彼は、約束を破った真人と決着をつけるため単身戦いを挑むが、壮絶な激闘の末に命を落とす。
しかし彼は死後も仲間へ情報を残し、迫り来る大事件を知らせる役割を果たした。
そして2018年10月31日。夏油を名乗る人物と呪霊たちは、かねてより準備を進めてきた計画をついに実行へ移す。
標的はただ一人、五条悟。虎杖たち呪術師は未曾有の危機が待ち受ける渋谷へ向かうこととなる。
<渋谷事変編>
2018年10月31日、ハロウィーンで賑わう渋谷駅周辺に一般人を閉じ込める巨大な帳が張られ、「五条悟を連れてこい」という要求が突き付けられる。
呪術高専は五条を中心に多数の術師を派遣し、渋谷で史上最大規模の戦いが幕を開ける。
圧倒的な実力で呪霊たちを追い詰めた五条だったが、かつての親友・夏油傑の姿をした男との再会によって一瞬の隙を突かれ、特級呪物「獄門疆」に封印されてしまう。
その正体は夏油ではなく、他者の肉体を乗っ取る術式を持つ千年以上前の呪術師・羂索であった。
呪術界最強の五条を失ったことで戦局は一変し、渋谷は未曽有の混乱へと陥る。
虎杖たちは五条救出を目指して各地で呪霊や呪詛師と死闘を繰り広げる。
七海建人、禪院直毘人、釘崎野薔薇らもそれぞれ激戦に身を投じるが、特級呪霊・真人の猛攻によって七海は命を落とし、釘崎も瀕死の重傷を負う。
さらに虎杖は宿儺に肉体を乗っ取られ、多くの一般市民を巻き込む大虐殺を引き起こしてしまう。
自らの意思ではないとはいえ、その惨状を目の当たりにした虎杖は深い絶望と罪悪感に苛まれる。
それでも仲間たちの思いに支えられた虎杖は東堂葵と共闘し、真人との死闘に挑む。
激戦の末に真人を追い詰めるが、最後は羂索が真人を取り込み、その力を利用して全国規模の新たな計画「死滅回游」を始動させる。
こうして渋谷事変は終結する。しかし、その代償はあまりにも大きかった。
五条は封印され、多くの呪術師が命を落とし、呪術界の体制は崩壊。虎杖の死刑執行も再び決定されるなど、世界は大きく姿を変える。
そして羂索の企てを阻止し、封印された五条を救うため、虎杖たちは新たな戦いへと歩み出していく。
<死滅回游編>
渋谷事変後、呪術界は大きく混乱し、五条悟は封印されたまま、虎杖悠仁の死刑執行も再び決定される。
しかし乙骨憂太の協力により虎杖は生き延び、伏黒恵や脹相と合流する。彼らは天元から、羂索が日本全国を舞台に術師同士が殺し合う儀式「死滅回游」を開始した目的を知らされる。
その狙いは、人類と天元を同化させるための莫大な呪力を生み出すことだった。虎杖たちは羂索の計画を阻止し、五条を救出するため、死滅回游への参加を決意する。
その準備として、禪院真希は妹・真依の犠牲によって覚醒し、禪院家を壊滅させる。一方、虎杖と伏黒は秤金次と星綺羅羅を仲間に迎え入れ、各地の結界(コロニー)へ分散して戦いに臨む。
各結界では、現代の術師だけでなく過去から受肉した強力な術師たちとの死闘が繰り広げられる。
虎杖は日車寛見、伏黒は来栖華、秤は鹿紫雲一、乙骨は石流龍や烏鷺亨子らと激突し、それぞれが死闘の末に協力者を得ながら、ルール追加によって参加者の救済を進めていく。
その裏で羂索は海外勢力まで利用して結界内に大量の死を生み出し、計画を着実に進行させていた。
そして物語は最大の転換点を迎える。伏黒の姉・津美紀だと思われていた人物の正体は、受肉した古代術師・万だったのである。
その隙を突き、宿儺はかつて虎杖と交わした「契闊」の縛りを利用して虎杖の肉体を離れ、伏黒へ受肉する。宿儺は万を殺害して伏黒の精神を深く沈め、自らの完全復活への道を切り開いた。
一方、高専側は来栖華の術式によって獄門疆の封印を解除し、ついに五条悟の救出に成功する。
そして五条は宿儺との決戦の日を12月24日に定める。
<人外魔境新宿決戦編>
2018年12月24日、獄門疆から解放された五条悟は、新宿で宿儺との決戦に臨む。
現代最強と呪いの王による史上最大の戦いは激闘の末、宿儺が伏黒恵の術式「十種影法術」を巧みに利用して五条を打ち破り、最強の呪術師は命を落とす。
その後、鹿紫雲一、日車寛見、乙骨憂太、禪院真希ら高専側の術師たちが次々と宿儺へ挑む。
一方、羂索は髙羽史彦との戦いで隙を突かれ、乙骨によって討たれる。しかし羂索は死の間際、人類と天元の同化を実行する権限を宿儺へ託す。
宿儺との戦いでは、多くの仲間が傷つき倒れながらも、それぞれが命を懸けて虎杖へ勝機をつなぐ。
やがて戦いは虎杖と宿儺の一騎打ちとなり、仲間たちの支えを受けた虎杖は宿儺を打ち破り、長きにわたる呪いとの戦いに終止符を打つ。
決戦後、術師たちは犠牲を悼み、それぞれの未来へ歩み始める。
虎杖、伏黒、釘崎の三人も再び任務に就き、新たな日常へと戻っていくことで、呪術廻戦の物語は幕を閉じる。

■感想
本作品は他作品を思わせる描写や演出、いわゆるオマージュが非常に多い作品である。
そのため本来であれば見どころとなる印象的なシーンにおいても「これは結局、他作品の焼き直しではないか」と感じてしまう場面が少なくなかった。
もちろん創作においてオマージュそのものを否定するつもりはないが、本作はその割合が高すぎるように感じられ、作者独自の発想による作品という印象を持ちにくかったことが私が本作を高く評価できない最大の理由である。
また、術式や縛り、領域展開など、複雑な設定によって物語の奥深さを演出しようとしている意図は伝わるものの、後付けと思われる設定や理解しづらい説明が多く、読者を置き去りにしている印象を受けた。
設定に凝る姿勢からは冨樫義博作品を意識していることがうかがえる。しかし冨樫作品は説明量が多くても、読み進めれば内容を理解できるよう構成されている。
一方本作は説明を読んでも理解しにくい場面が多く、複雑さが必ずしも面白さにつながっていないように感じた。この点では、冨樫作品には及ばないと思う。
さらに、本作最大の見どころであるはずの宿儺との最終決戦はあまりにも長かった。
総力戦を描きたかったのだろうが、多くのキャラクターが次々と戦いに加わる構成になったことで、似たような展開が繰り返され、物語全体のテンポが停滞してしまった印象がある。
また五条悟ですら倒せなかった相手を最終的に倒せたことについても十分な納得感を得られなかった。
特に主人公・虎杖悠仁は終盤まで決定的な活躍の場面がほとんどなく、最後に宿儺を倒す展開も「主人公だから倒させた」という印象が強く物語としてやや強引に感じられた。
宿儺を倒した後は駆け足で幕を閉じた印象は否めない。エピローグが短く生き残ったキャラクターたちのその後や、新しい呪術界がどのような未来へ向かっていくのかをもう少し丁寧に描いてほしかった。
また主人公である虎杖悠仁は長い物語を経たにもかかわらず、内面的な成長や変化が十分に描かれたとは感じられなかった。
その結果、作品全体として何を主題に据えていたのかが曖昧で読後に強いメッセージが残りにくかった。
総じて本作は五条悟というキャラクターの存在感があまりにも突出していた。
五条悟対宿儺、五条悟対伏黒甚爾といった戦いの完成度が非常に高かっただけに、それ以外のバトルはどうしても見劣りしてしまう。
そのため、七海のセリフ「もうあの人一人でよくないですか」という言葉が正に当てはまると感じた。
作品全体としては高い完成度を持つ一方で、その圧倒的な存在感が他のキャラクターや終盤の展開をかえって霞ませてしまったように感じる。
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