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■本の情報
<作者> 伊坂幸太郎
<発行日> 2019年4月 (中央公論新社)
■感想 ネタバレを含みます。
<螺旋プロジェクト>
螺旋プロジェクトとは、8組の作家によってある"ルール"のもと、古代から未来までの日本を舞台に、海族と山族の対立の歴史を描くプロジェクトのこと。
本書にはシーソーモンスターと、スピンモンスターの2作が描かれており、前者は昭和後期の時代で嫁姑問題を題材に、後者は近未来の話で人生のライバルについて描いてます。両者は独立した話ではありますが、
登場人物に繋がりがあります。(北山宮古とせつみやこ)。また作中に出てくるカタツムリの存在は、その殻が螺旋を意味しているのだろうと思いました。
私はこの時点で螺旋プロジェクトの作品は本書しか読んでませんが、私はスピンオフ作品や異なる作品同士の繋がりがあるのが好きなので、ほかの作品も読んでみたいと思いました。
私の予想ですが、カタツムリは他の作品にも出てくるのではないかと思います。
<伊坂幸太郎さんの考える未来の姿>
作家が未来の世界を描くときに、全くのでたらめの世界ではなく、"実際の世界も未来にはある程度こうなっているだろう"と考えて描いていると、私は考えてます。
伊坂幸太郎さんの描く未来の特徴は以下。
・デジタルデータからアナログデータへの回帰が進む。きっかけは2032年の大停電によって重要なデータが消失してしまったこと、お偉いさんのハレンチ動画がネット上に拡散されてしまったこと、などがあり、重要なデータほどアナログへ。
・AIが世界を管理する。人間を操作するためには偽の情報までもAIによって作られ、流される。
・自分の見たものをすべてデータ化できる技術がある。
・データはハードディスクに保存されている。これは実世界の現在でもハードディスクに代わるデバイスが普及し始めているので、近未来にはハードディスクは存在しなくなっていると私は思います。
<伊坂幸太郎作品の定石シーン>
悪の組織(院長の息子とやくざ)、強大な敵(AIウェレカセリ)が出てきます。また主人公が、みすみす悪の組織に捕まってしまうというシーンも、グラスホッパーのシーンにもありました。
また動物や昆虫の例えも出てきます。「ネズミにとっての猫、カイガラムシにとっての何とかテントウムシ」(これはアカホシテントウのことです)。
<歴史上の人物のセリフ>
何度か歴史上の人物のセリフを引用してます。私にとって初めて聞く言葉もあったので本当かどうか調べたところ、本当にあったので驚きました。
"紀元前のギリシアの教え、保証人になれば破滅する、という話を思い出す。借金と人間関係のトラブルは紀元前から続く問題なのだろう" これは古代ギリシアの哲学者タレスの教えです。
"天体の動きなら計算できるが、人々の狂気までは計算できなかった" これはバブルの語源ともなった南海泡沫事件のことを皮肉としたニュートンの言葉です。
"おそらく古代エジプト文明のころから言われていたと思いますが、人は見かけによりません" これは本当に古代エジプト文明のころから言われていたのかは不明です。
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