円高と円安どちらが良いのか?円安は本当に悪いのか



経済・経営

公開日:2024/4/29    

■円高、円安の影響

以下は円安の影響になります。円高はこの逆であると考えればよいです。

輸入時:原材料や製品の値段が高くなる (デメリット)
輸出時:輸出製品について、同じ販売価格でも多くの利益を得られる (メリット)

■企業にとっては円安の方が良い

多くの企業にとっては、円安のメリットが円高のデメリットを上回ります。まず、輸出の多い自動車や電機関連などの製造業は、円安の方が良いのは想像に難くないと思います。 一方、輸出に頼っていない飲食業、食料品、衣料品製造業、電力会社などについても、原材料の高騰分は製品価格に転嫁すれば良いので、企業の利益が損なわれることはありません。 その証拠に、セブン&アイ・ホールディングス、ファーストリテイリング、東京電力などは23年度の収益は過去最高を更新しております。

また国内観光業や飲食業についても、円安の影響によるインバウンド消費が増加しており、こちらも23年の外国人の消費額は過去最高を更新しています。



<円安で進む工場国内回帰と海外企業誘致>
もう一点、円安によるメリットとして、国内からの輸出による利益増加メリットと人件費低下によるメリットから、工場の国内回帰と、海外企業の誘致が進んでいます。 例えば、TSMCやラピダスが熊本や千歳に半導体工場を建設する等の事例が挙げられます。

■消費者にとっては円高の方が良い

円安による原材料高騰分は製品価格に転嫁されると説明しましたが、その分消費者にとっては痛手となります。更に海外から輸入製品も値段が高くなりますし、海外旅行費用も高くなります。 つまり円安は、欲しいものが買えない、やりたいことが出来ないという、我々の生活水準が低下している事を意味します。

■為替は国力を表している

国力を強くするためには企業が成長しなければならないので、円安と円高を比べると上記理由から円安の方が国全体としてはプラスになります。 そして国力が向上すると円高になり、国力が低下すると円安となります。因果関係に注意が必要で、円高にしたからといって国力が強くなる訳でも、円安にしたからといってと国力が弱くなる訳ではありません。



以下は為替レートと貿易収支のグラフになります。1980年頃までは円安の力によって急成長しており、その事態を重く見たアメリカの圧力よって1985年にプラザ合意を結び、それによって円高方向に進みました。 その結果、2000年頃まではまだ国力が強かったため円高でも貿易収支を黒字を保つことができましたが、2008年のリーマンショックによる強烈な円高によって、いよいよ国力が維持できなくなり貿易収支も黒字を維持できなくなりました。


なお、為替の影響が貿易収支に表れるのは数年後になるため、2024年現在は円安に進んでいますが、貿易収支が改善するのはその数年後になります。

■結論:国力が低下している現在は円安のほうが良い(円安になって然るべき)

円安になって「i-phoneも買えなくなり、海外旅行にも行けなくなった」という声をよく聞きますが、ならば国内企業のスマホを買って、旅行国内をして、国力を付けるための消費行動をするしかありません。 そうする事ができずに、昔の生活レベルを維持しようと考える国民のマインドこそが、日本の国力低下を引き起こしている要因の一つとなります。

また為替介入や経済の実態に即していない利上げによって、無理に円高にする必要もありません。 為替介入を実施する理由は、急激な円安になるのを防ぐために実施しているのであって、これで根本的に円高にするためにしているのではありません。

今の円安の状況を活かして、もう一度国力を取り戻すような消費者行動を国民全員で行えば、再び国力を取り戻し、円高になっていずれ海外旅行もすることも出来ます。






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