ヒューリスティックとは, バイアスとの違い



心理学, 哲学, 行動経済学

公開日:2023/12/10   

■ヒューリスティックとは

ヒューリスティックとは「経験則」のことです。経験則に頼りすぎて誤った判断をしてしまう場合がありますが、それよりも、 重大な局面や危機に陥った際や複雑な事象を解決する際に、ヒューリスティックを用いて瞬時に物事を判断することの方が、生存にとっては有利に働いてきたという証拠であると考えられます。 以下にヒューリスティックの例を示します。

<代表性ヒューリスティック>
ある集団の代表的(典型的)な要素を取り上げて判断すること。例えば「眼鏡をかけている人は勉強ができる」など。 有名な事例に「リンダ問題」があります。リンダさんは社交的で、差別や社会主義に関心があるという情報を与えた後、 リンダさんに当てはまる事はどれかという質問をしたら、単純に銀行員であるという回答よりも、銀行員でフェミニズム活動家であるという回答の方が多かったというもの。 本来は銀行員であるという回答の方が当てはまる確率は高い筈である(条件が広いため)。

<利用可能性ヒューリスティック>
より強く記憶に残っている情報を優先して判断すること。例えば、コインを投げて連続でオモテが出たら、次はウラが出るだろうと判断してしまうこと。ギャンブラーの誤謬とも呼ばれる。 反対に、連続してシュートが入ったら次もシュートが入ると考える事をホットハンドの誤謬といいます。ホットハンドは実在するか否かについては、専門家の間でも論争ががあります。

<固着性ヒューリスティック>
直前に提示された値や情報に強く影響されて物事を推論してしまうこと。例えば、Aのグループにミシシッピ川の長さは100kmより長いか、短いかの質問をした後に、自分の推定するミシシッピの長さを答えてもらう。 Bのグループにはミシシッピ川の長さは4000kmより長いか、短いかの質問をした後に、自分の推定するミシシッピの長さを答えてもらう。するとBグループの方がAグループよりはるかに長い長さのミシシッピ川を推定した。 100kmや4000kmはミシシッピ川の長さとは全く関係ないにもかかわらず、その値を参考にしたことが解る。この様な効果をアンカリング効果ともいう。

■バイアスとは

バイアスとは「先入観」「偏見」のことです。先入観や偏見は、過去の「経験則」に基づいて形成されることが多いので、ヒューリスティックと非常に近い意味を持っております。 ヒューリスティックはどちらかといえばニュートラルな意味、バイアスは悪い意味として使い分けをしている様に思われます。ステレオタイプともいいます。バイアスには以下の例があります。

<認知バイアス>
認知バイアスとは、これまでの経験や直観から生まれるバイアスのこと。

<確証バイアス>
確証バイアスとは、自分がそうであって欲しいという情報ばかりに目が行き、そうではない情報は軽視してしまうバイアスのこと。

<権威バイアス>
権威バイアスとは、権威のある人や専門家のいう事に対しては簡単に信じてしまうバイアスのこと。

<正常性バイアス>
正常性バイアスとは、危険な状況であっても正常の範囲内であると考えてしまうバイアスのこと。例えば、地震が起きて避難指示があっても、大丈夫だろうと思ってしまう等。

<希少性バイアス>
希少性バイアスとは、数が少ないものの方が内容にかかわらず価値が高いと考えてしまうバイアスのこと。

<後知恵バイアス>
後知恵バイアスとは、物事が起きた後に「やっぱり思った通りだ」と予測可能だったと考えてしまうバイアスのこと。似た言葉に「事後諸葛亮」、「後出し孔明」があります。




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