積荷崇拝(カーゴ・カルト), 過剰模倣, 守破離



心理学, 哲学, 行動経済学

公開日:2022/12/29    

■積荷信仰(カーゴ・カルト)とは

積荷信仰とは、本質的には意味のない行動を形だけ真似る行為のことです。平たくいえば猿真似という意味にも近く、あまり肯定的なニュアンスは無いように思われます。

その由来は、戦時中に太平洋の島々の原住民が、飛行機に乗ってやってきて大量の物資を提供していく米軍の姿を見て、 戦争が終わった後も飛行機に乗った米軍を招き寄せようと、 滑走路と藁で作った実物大の飛行機を作り、祈りをささげたというところから来ています。

現代の積荷信仰の例として、著名人に憧れその人と同じ格好をする人などが挙げられます。

■過剰模倣とは

過剰模倣とは、本人がその行動の意味を理解していなくても、相手の行動を形だけでも真似る行為のことです。積荷信仰と意味は似ていますが、その解釈が大きく異なります。

二つの例を挙げます。
アフリカの先住民は、有毒な成分が入っている芋の毒素を抜くために、砕いて、煮詰めて、固めて、焼くという工程を経て食べています。 これはご先祖様が毒素を抜く手法を編み出した結果なのですが、今の住人はそのことを知らずに「先祖代々伝わる食べ方」という理由でこの食べ方をしております。

もう一つの例は、鍵がかかった箱の開け方を幼稚園児とチンパンジーに教える実験です (両者は同じ知能を持っている前提)。 先ずは中身の見えない黒い箱に対して、本来箱を開けるのに必要のない行為(違う鍵穴に鍵を入れるなど)を織り交ぜて教えますが、 この場合、幼稚園児もチンパンジーもその箱を開けるのに必要のない行為も真似て箱を開けます。

次に中身が見える透明な箱に対して、同様に箱を開けるのに必要ない行為を織り交ぜて教えた場合、チンパンジーはその箱を開けるのに必要のない行為を理解し省略し最短の手順で箱を開けますが、 幼稚園児はそれでも、箱を開けるのに必要ない行為もきちんと行って箱を開けます。

これはチンパンジーが賢いという事を意味しているのではなく、その行為の意味は分からなくても先ずは真似した方が、 この複雑な世界においてはよりうまく対応できるということが、人間の本能に組み込まれていることを示しています。

したがって過剰模倣はもちろん、積荷信仰も決して馬鹿にはできません。なお日本には「守破離」という言葉がありますが、この「守」も過剰模倣に通じるものがあります。

■守破離とは

日本の茶道や武道などにおける、その道の到達段階を表しており、 「守」は師の教えや型を忠実に守り、 「破」は教わった型を破り改良し、 「離」はその型から離れ、独自のものを生み出し確立する段階となります。




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