■本の情報
<作者> スティーブン・R・コヴィー
<発行日> 2015年8月 (キングベアー出版)
以下黒字が本の要約、緑字が私の感想/補足説明です。 リンク先は用語に対する私の解説です。
■原則とは
人生の成功には公正、誠実、謙虚、誠実、勇気、正義、忍耐、勤勉、尊厳 など、人間の内面にある人格的なことを原則とすることが必要である。これを人格主義という。
対して、個性、社会的イメージ、態度、行動、スキル、テクニックなどによって人間関係を円滑にすると成功は生まれるという考えを個性主義といい、これは本質的なことではない。
しかし現代では、個性や人間関係のテクニックが良いとされる様々な書籍が溢れており、人の操り方や、酷い時にはだましのテクニックさえ紹介されている場合もある。
人間関係のテクニックは、主に心理学、行動経済学に基づくものであり、私も何冊もそういった書籍を読んできたが、その考え方は本質ではないと気づかされた。
ただし応急処置としては一定の効果があるので、原則と併せて使っていくことは良いのだとは思う。本著でもある程度の使用を認めている節もある。
■パラダイムの力
人間関係が拗れるのは、たとえ同じものを見ていても、見ている視点(見方)が互いに違うからである。これをパラダイムという。
一枚の絵がお婆さんにもお姉さんにも見える有名な錯視画像があるが、これも見方によって見えている景色が違う例である。
これはどちらかが間違っているのではなく、両方の意見が正しい状況があり得るという事を示している。パラダイムは過去の経験による影響を大きく受ける。
パラダイムシフトとは、これまで当たり前と考えられていた物の見方が劇的に変化することである(要するに"目から鱗"である。パラダイムシフトというと格好よく聞こえるが、目から鱗というと大したことなく聞こえるのは不思議だ) 。
先ほどの錯視画像の例でいうと、今までお婆さんに見えていたのが、あることをきっかけにお姉さんに見える事である。最初のイメージに縛られている人ほど、その影響は強烈になる。人間関係を良好にして人生を成功に導くには、小手先のテクニックでやり過ごすのではなく、
原則中心のパラダイムにシフトする事が重要である。そして原則中心のパラダイムにシフトするには長い期間をかけて取り組まなければならない。
■変わるのは自分、しかし相互依存が最高の状態
人のパラダイムは変えることはできない。あくまでも変わるのは自分である(これをインサイド・アウトという)。ただし自分が変わることで相手に影響を与える事ができる。例えば幸せな結婚生活を望むなら、自分自身がポジティブなエネルギーを生み出す必要がある。対して被害者意識の強い人は、思いどおりにいかない状況を他人や環境のせいにする(アウトサイド・イン)。
カナダの心理学者エリック・バーン(1910-1970)の有名な言葉に、「他人と過去は変えられないが、自分と未来は変えられる」とある。更にこれに対し「自分の行動は変えられるが、自分の行動に対する結果はコントロールできない」という言葉もある。
また、自立が最高の状態ではなく、相互依存が最高のパフォーマンスを発揮できる状態である。相手は変える事ができないといいつつも影響を与える事で、相互依存の状態を作り出すことができるということである。
■ガチョウと金の卵の寓話
1日1つ金の卵を産むガチョウがいて、飼い主は初めは地道に1日1つずつ卵を売りさばいていたが、次第にそれがじれったく感じ、ガチョウを殺して腹の中から一気に卵を取り出そうとしたが、
実際には腹の中は空っぽで、金の卵と、卵を産むガチョウ両方とも失ってしまったという話。
金の卵を成果(P:Production)、ガチョウを成果を生み出す資産あるいは能力(PC:Production Capability)として考える事ができ、この両者のバランスを保つことが日常生活においても重要である。
例えば、レストランで利益を上げようと材料を安く質の悪いものに切り替えると、一時的には利益が上がるがレストランの評判が落ちて長期的には損をする。など。
金の卵を産むガチョウの寓話は昔から知っていたが、その時は「飼い主は馬鹿だなぁ、誰もこんな事する訳がない」としか思っていなかった。
しかし日常生活において、同じような構図に陥っている例はたくさんあるという事に気づかされ、私の中でパラダイムシフトが起きた。
■7つの習慣とは
原則を具体的な形にしたものが7つの習慣である。
<主体的である> 第1の習慣
刺激に対する反応の間には、自覚、想像、良心、意思に基づいた選択の自由がある。これは人間にしか備わっていない能力である。
(とあるが、動物にも選択するという事が本能として備わっていると「選択の科学 」で述べられている。また動物界において、ライオンに襲われた子牛を仲間の牛全員で助ける事があるが、これも牛なりの良心に従って選択した結果ではないかと思う。
ただし動物にも選択する自由があるか否かはここにおいて本質的な問題ではなく、我々が自分で選択する事ができると認識する事が重要である)
主体的な考えの対極にあるのは反応的な考えである。また主体的はポジティブシンキングとも異なる。主体的な考えは、現状や将来の予測に対して、前向きな反応を選択できるという事も認識している。
反応的な人は、自分の置かれている望まない現状は、自分の責ではなく外的要因によってもたらされていると考える。それは遺伝的決定論、心理的決定論(幼少期にそういう育てられ方をされたせい)、環境的決定論(上司のせい、社会のせい、国のせい)によるものだと考え、発せられる言葉も否定的なものになる。
これらの考え方は、引き寄せの法則に似ていると感じた。
<終わりを思い描くことから始める> 第2の習慣
自分の葬儀の場面を想像した時に、どんな情景が思い浮かぶだろうか。そしてそれは自分が望む姿であろうか。望ましいと思わないならば、それを変える様に今からでも努力するべきだ。
人はもっと高い収入、もっと高い評価、もっと高い専門能力をえるために努力するが、結局、自分にとって大事なものを失い、取り返しのつかない過ちを犯したことに気が付くのだ。
自分も、自分の葬儀を想像したら、駆けつけてくれる人少ないな~と思い非常に悲しくなってしまった。その日はとりあえず旧友にひたすらメールを送りました。笑
終わりを思い描いたら次に脚本を書き直す必要があるが、人は誰でも何かを中心に考えている。例えば、配偶者、家族、お金、仕事、娯楽、友人など。しかしいずれも中心に置くべきではなく、あくまでも原則を中心に置くべきである。
とはいいつつ、それを実践するのは非常に難しい。
<最優先事項を優先する> 第3の習慣
もの凄い当たり前の事を言っていると思うかもしれないが、何が最優先事項か自分自身が気が付いていない場合や、最優先事項と解っていつつもその時の衝動や欲望に負けてしまう場合がある。
優先事項を確実に実践するには、目的意識と使命感を持って、はっきりとしたイエスを持ってノーと答えなければがならない。
優先順位を見える化するため、以下の様なマトリクスで考えるとよい。本来は、自分のPCを高める第Ⅱ領域に多くの時間を費やす必要があるが、それが出来ていない人が多い。例えば、第Ⅰ領域に入ってばかりで束の間に第Ⅳ領域に入る人、
または本当は第Ⅲ領域の仕事だが、第Ⅰ領域と思い込んでその仕事ばかりしてしまう人など。
上記の様な仕事の仕分けは私の会社でも使われており、WIP(Work In Process)ボードと読んでいる。仕事では、自分にとっては第Ⅲ領域だと思っていても、他人にとっては第Ⅰ領域であるという事がよくあり、どうしても第Ⅲ領域と知りつつもやらざるを得ない状況に陥ってしまう。
それを回避するには、相手にも本当に第Ⅰ領域かを考えてもらう必要があると思った。
<Win-Winを考える> 第4の習慣
会社の報酬が成果型の報酬システムの場合、誰かが勝ったら必然的に誰かが負けるwin-loseの構図になっており、組織全体としては良いパフォーマンスを出来なくなるという例の紹介があった。
成果型報酬に対する欠点は、メアリー&トム・ポッペンディーク著「リーン開発の本質 」でも述べられている。
また私の会社でも成果型報酬が取り入れられており、その弊害が顕著に表れている。
パラダイムはwin-win、win-win or no deal、win-loseなど様々あるが、状況次第でどのパラダイムも一番になり得る。肝心なのは、状況を正しく読み取って使い分ける事である。
win-winを実現するには、思いやりと勇気、そして相手との信頼関係が必要になる。
<まず理解に徹し、そして理解される> 第5の習慣
学校では何年も読み書きや話し方を学んできたが、聴き方を学んで来た人は少なく、たとえ学んだとしても個性主義のテクニックばかりである。
またほとんどの人は、相手の話を聴くときは理解しようとして聞いている訳ではなく、次に自分が何を話そうか考えている。
相手の事を理解したつもりでも、自分のそれまでの経験に照らし合わせて理解したつもりになっているだけである。
相手の話を聴くときの姿勢は何段階かに分かれ、最高のレベルは、相手の身になって聴く共感による傾聴である。ただしこれは相手の言葉をオウム返しで応えるなどの、傾聴ののテクニックのことではない。
<シナジーを創り出す> 第6の習慣
シナジー(相乗効果 )とは1+1が2以上の効果をもたらす事である。自分とは違うものの見方を認め、自分と他人の違いに価値を置くことがシナジーの本質である。
決して相手と同一の価値観に身を置く事ではない。シナジーを作り出すためには、相手を理解し、心を開いて話し合える雰囲気を作る事である。
<刃を研ぐ> 第7の習慣
木を切るのに忙しい木こりに対し「ノコギリの刃を研いだらもっとはかどります」とアドバイスするも、「木を切るのに忙しくて刃を研ぐ時間なんてあるか!」と応える、皮肉の話が印象的。
刃を研ぐことは第Ⅱ領域に入る活動を行うことである。
肉体的側面や知的側面などにおいて歯を研ぐことが必要で、肉体的側面はまさに運動や筋肉トレーニングを行うこと、知的側面は社会に出てからも絶えず勉学に励むことで、特に優れた文学を読む習慣を身につける事が重要である。
■感想
自分が見ている世界だけが正しいとは思わずに、相手も違う見方を持っていると認識し、相手を認める事が重要だという事が一番印象に残った。
また、原則中心の考え方は極めて正しい考え方であるが、実践するのは非常に難しく、日々意識して取り組む必要があると身に沁みた。私の会社でも、この原則に似たようなスローガンが掲げられているが、定着しているとは言い難い。
これが定着したらもっと私の会社は良いものになるのだろう。