天照大御神と須佐之男命 (古事記)



古事記

公開日:2025/2/17     

関連知識
 ・登場人物, 神の系図
 ・前の話:伊邪那岐神と伊邪那美神
 ・次の話:大国主神


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■天照大御神と須佐之男命の誓約(うけい)

追放されることになった須佐之男命(すさのお)は、天照大御神(あまてらすおおみかみ)に事の次第を伝えてから根之堅洲国(ねのかたすくに)に行こうと思い、高天原に上ったときに山や川は全て揺れ動き、国土は皆震えました。 天照大御神は、須佐之男は高天原を奪いに来たのではないかと考え、御髪を解き、男性の髪型のみずらを結い、大きな勾玉を多数紐に連ね、鎧の背中には千本の矢入れを負い、胸には五百本入りの矢入れを着け、 左の腕には威勢のいい音を立てる竹の鞆を着けて、地面を蹴散らして威勢よく踏み勇み、須佐之男を待ち受け迎えました。 須佐之男は何の邪心もないという事と、これまでの事情を伝えましたが、天照大御神は身の潔白をどのように明らかにするのかと問うたところ、須佐之男は誓約をすることを提案しました。

先ずは天照大御神が須佐之男の持っている十拳の剣を三つに折りたたんで洗い清め、嚙み砕き、勢いよく吹きかけると、その霧の中から女の三神が生まれました。 次に須佐之男が天照大御神のみずらに巻いていた勾玉を洗い清め、噛み砕き、勢いよく吹きかけると、その霧の中から男の五神が生まれました。 この女の三神(宗像三女神)は須佐之男の持ち物から生まれたため須佐之男の子供、男の五神は天照大御神の持ち物から生まれたため、天照大御神の子供としました。

■天照大御神の天の石屋隠れ

須佐之男は天照大御神に、「私の心が潔白だったので女神を成し得たのです。この事から誓約は私の勝ちです」と言って、勝ちにまかせて田に引く水路の溝を埋めたり、大嘗祭の御殿に糞をまき散らしました。 最初は天照大御神は須佐之男のことをかばっていましたが、ある時、祭りの衣を織っている建物の天井に穴をあけ、天の斑馬を尻の方から皮を剝いで落とし入れた時に、服織女がそれを見て驚き、機織り機に陰部を突いて死んでしまいました。

天照大御神はそれを見て恐れ、天の石屋(いわや)に引き籠ってしまいました。この時、高天原も葦原中国(あしはらのなかつくに)も真っ暗闇となりました。そこで高天原の八百万の神が安の河原に集まって何とか天照大御神を外に出そうと考えました。 思金神(おもいかねのかみ)が思案し、天の長鳴鳥を集め鳴かせ、鏡や勾玉などを捧げ物として奉り、天宇受売命(あめのうずめのみこと)が日影かずらをたすきにして、髪飾りをつけ、石屋の戸の前に桶を伏せて踏み鳴らし、 神が乗り移った状態で、乳房をあらわに取り出し、下衣のひもを陰部まで垂らした。すると高天原が振動せんばかりに八百万の神が笑いました。

この様子を天照大御神は不思議に思い、石屋の戸を細めに開け、天宇受売に「自分がここに籠ったので世界は暗闇になっている筈なのに、どうして天宇受売は踊って、八百万の神々も笑っているのか」と尋ねると、 天宇受売は「あなた様にもまして貴い神がおいでになっているためです」とこたえる。その間に天児屋命(あめのこやねのみこと)と布刀玉命(ふとたまのみこと)が鏡を差し出して天照大御神に見せると、鏡に貴い神の顔が映っていたので、 天照大御神はますます不思議に思ってそろそろと戸から出たその時、戸の傍に隠れていた手力男神(たぢからおのかみ)がその手を取って引き出した。布刀玉命はしめ縄を天照大御神の後ろに引き渡し、石屋に戻ることができない様にしました。

こうして世界に日の光が戻り、八百万の神は皆で協議して須佐之男の財物を没収し、髭と手足の爪を切り、罪を祓わせて高天原から追放しました。


■大宜津比売神殺し

下界に降りた須佐之男は大宜津比売神(おおげつひめのかみ)に食べ物を求めました。大宜津比売は鼻・口・尻からいろいろな美味のものを取り出し調理していた時に、須佐之男はその様子を密かに覗き見していました。 須佐之男は穢れた食べ物を自分に食べさせようとしていると思い、大宜津比売を殺してしまいました。すると死んだその体の頭には蚕が、目には稲の種が、耳には粟が、鼻には小豆が、陰部には麦が、尻には大豆が生じました。 神産巣日神はこれらを取って種としました (これが五穀の起源と考えられる)。

■須佐之男の八俣大蛇退治

須佐之男は出雲国の肥河の上流の鳥髪に降りました。そこには老婆(手名椎)と老翁(足名椎)と娘(櫛名田比売)がいて、「もともと8人いた娘達を毎年八俣大蛇がやってきて食ってしまい、今その大蛇がやってくる時期なので泣いている」と須佐之男に告げました。 須佐之男は「どんな形か」と問うと、「目は赤かガチ(ほおずき)の様で、一つの胴体に八つの頭と八つの尾があります。また体には日影葛と檜、杉が生え、その長さは谷を八つ、峯を八つ渡るほどで、その腹を見れば、どこもかしこも血が流れています」と言いました。 そこで須佐之男は「自分は天照大御神の弟である。訳あって天上から降りてきている」と言って、娘を貰い、娘を櫛に変え、老婆と老翁には酒をつくらせて八俣大蛇に飲ませます。そして八俣大蛇が酔って寝てしまったところを十拳の剣で大蛇を切り刻んで退治し、その際大蛇の中から見つけた草薙の剣を天照大御神に献上しました。

こうして須佐之男は「すがすがしい」と言って出雲国に宮殿を作ってそこに住み(その地を須賀という)、櫛名田比売と夫婦の契りを結び、多くの子孫を残しました。





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