清少納言, 枕草子



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公開日:2025/3/9   

■清少納言とは

清少納言(966-1025頃)とは平安時代に活躍した人物で、一条天皇の后である藤原定子に仕えました。その時に作りあげた随筆に「枕草子」があります。 同時代に源氏物語を書いた紫式部(978-1031頃)がいますが、紫式部は一条天皇のもう一人の后である藤原彰子に使えました。



清少納言は、天武天皇を祖先とする清原氏の血筋です。


■枕草子とは

清少納言の作った枕草子は日本の三大随筆の一つ。他の二つは、鴨長明(1155-1216)の「方丈記」、吉田兼好(1283-1352)の「徒然草」です。 枕草子は「自分の目に映り、心に浮かんでくることを誰も見る事は無いだろうと思って書き記したものである。無意味なものだし誰かにとっては都合の悪い、言い過ぎたところもあるので、しっかり隠しておいたと思っていたのに、予期せず世に漏れ出てしまった」 と清少納言は述べています。

枕草子の出だしは有名で以下となります。

春は、あけぼの。やうやう白くなりゆく山ぎは、すこしあかりて、紫だちたる雲の、細くたなびきたる。

夏は、夜。月のころは、さらなり。闇もなほ。螢の多く飛びちがひたる、また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち光りて行くも、をかし。雨など降るも、をかし。

秋は、夕暮れ。夕日のさして、山のはいと近うなりたるに、烏の、寝どころへ行くとて、三つ四つ、二つ、三つなど、飛びいそぐさへ、あはれなり。 まいて、雁などの列ねたるが、いと小さく見ゆるは、いとをかし。日入りはてて、風の音、虫の音など、はた、言うべきにあらず。

冬は、つとめて。雪の降りたるは、言うべきにもあらず。霜のいと白きも、また、さらでもいと寒きに、火などいそぎおこして、炭もてわたるも、いとつきづきし。 昼になりて、ぬるくゆるびもていけば、火桶の火も、白き灰がちになりて、わろし。


その他、清少納言の考え方で印象に残った物を記します。上から目線であるという批評があるのも、理解できます。

4.身分の低い人は必ず言いすぎる傾向

22.将来の希望もなく、現実的で、幸運でもない平凡な結婚などに甘んじている人は、私からすると軽蔑の対象

43.貧しい民家に雪が降っていたり、月が差し込んでいるのは似合わない。中年の女が若い夫を持つのもみっともない。身分の高くない女が紅の袴を身に付けるのも不釣り合い。

55.若くて身分も低くもない男が下働きの女の名前をなれなれしく言うのは癪に障る。

61.男は女と別れる朝の振る舞いで愛情を表現して欲しい

91.手紙を書いて送った後に文字を一つ二つ書き直したいと思った時に腹が立つ

93.その人にとって恥ずかしくて忘れたいことを、ずけずけ言うのはあさましいと思う

105.見た目が悪い男女が共に昼寝しているのはを見ると目をそむけたくなる

115.良い家柄の若い男が礼拝を繰り返す様子は心が動かされる

118.寒い日や暑い日に粗末な身なりをした貧しい女が子供をおんぶしているのはわびしい

120.男は女に対して「思っていたのと違うし、しっくりこない」と思っていても、向かい合っている時は機嫌を取って期待をさせる。その内心を想像した時に恥ずかしい気持ちになる

121.誰かの妻が嫉妬してわざと姿をくらましたものの、夫の方は平気な様子でいるので、自分からすごすごと家に戻るのは無様である

123.誰かが悲しい出来事を話して泣いている時に、私も「なんてつらいの」と言いながら涙が出てこないのは気まずい。感動的な話を聞くととめどなく涙が流れてくるのに。

148.いたどりは虎の杖と書くらしい。虎なんて杖がなくてもよさそうな顔つきだけれど。文字にすると大げさな感じがする

149.さほど愛していない妻が体調を壊して長く病床にいるのは、男としては煩わしいだろうな

152.伏見稲荷に参詣しようと登っていて、途中で苦しくて休んでいると、40過ぎに見える女が元気に歩いているのを見ると、普段は目にもかけない様な人なのに今すぐあなたになりたいと思ってしまった

187.宮仕えをしている女のもとを訪ねる男が、そこで物を食べるのは見苦しい

212.月の光が窓から差し込んで、寝ている人たちの着物の上を白々と照らすのがハッとする美しさだった。こんな時にこそ人は歌を詠むのだろう

221.何より文句を言いたいのは、みすぼらしい車で貧乏くさい衣装を着て見物をする人

242.知性の欠ける人に限って利口ぶって、賢い人にあれこれ教えたりする

248.男というものは、誰かを思いやる気持ちや共感力が欠けている

249.世の中でやはりとても憂鬱なものといえば、人に嫌われること

250.男は考えられないくらい奇妙な生き物で、美しい女性を捨てて醜い女を妻にしたりする

252.噂話をしている人に腹を立てる人は理解ができない。何故なら人のうわさ話をしないではいられないから

290.気に入った歌をその辺の下女が口ずさんでいたらがっかりする

291.そこそこの身分の男を下女が褒めるなら、男は直ぐに下に見られてしまう。むしろ下女には悪口を言われるくらいがいい


■紫式部の清少納言評

紫式部と清少納言は面識があったかどうかは分かっておりませんが、紫式部は清少納言のことを痛烈に批判しております。

清少納言という人は、まるで得意げな顔をして、漢字をこれでもかと書き散らしているけれど、その学識の程度をよく見れば、実は未熟な部分が目立つ。 人と違うこと、つまり個性をひたすら追い求める人というのは、やがて周りと比べて見劣りし、将来は残念なことになってしまう。

た風流を気取る人は、普通なら何とも思わないような場面にまで「いとをかし」と感動し、何でもかんでも拾い集める。 でもそうやって無理を重ねるうちに、現実とのズレが大きくなり、周りから見れば浮ついた態度に見えてしまう。 結局、そういう人の行き着く先って、どうなるんだろうね。





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