デウカリオンの洪水伝説 (ギリシャ神話)

■デウカリオンの洪水伝説

ゼウスは人間たちが傲慢になり道徳を失って堕落していく姿に深く失望しました。正義も秩序も失われた地上を見て、ゼウスは人類をいったん滅ぼしてやり直そうと決意し大洪水を起こすことにしたのです。 ゼウスは南風を吹かせ激しい豪雨を降らせました。空から降り注ぐ雨と荒れ狂う海の水が合わさり、世界中の川や海はあふれ沿岸や平野にある都市はすべて水に沈みました。 大地は水に飲まれ、山の頂のわずかな部分を除いて世界のほとんどが水没してしまいました。

しかし、ただ一組の人間がこの災厄を免れます。それが知恵深いプロメテウスの息子デウカリオンとその妻ピュラーでした。 プロメテウスは息子にゼウスの計画を密かに伝え、洪水が来る前に方舟を作って備えるように助言したのです。デウカリオンは指示に従い、船を作って食料を積み、ピュラーと共に乗り込みました。 洪水は9日9夜続き、世界はただの大海原と化しました。ようやく水が引いたとき、二人の方舟はギリシャ中部のパルナッソス山の山頂にたどり着いたといいます（他にエトナ山、アトス山、オトリュス山などの説もあります）。

洪水が収まった後、デウカリオンはゼウスに感謝の意を表して生贄を捧げ、妻ピュラーと共にケーピーソス河のそばにある女神テミスの神殿で祈りを捧げました。 彼らはもう一度人間をこの地に戻してほしいと神に願ったのです。その願いに応えてゼウスは神使ヘルメスを遣わし、彼らの祈りに応えるよう命じました。ある伝承ではテミス女神自身が現れたとも伝えられています。

神のお告げは一見謎めいたものでした。「あなたたちの顔を布で包み、母親の骨を背中越しに投げなさい」というものでした。 ピュラーはこれを聞いて、「母の骨を投げるなどという親不孝なことはできない」と悲しみましたが、デウカリオンは「母親とは大地のこと、骨とは地面の石なのだ」と解釈しました。 そこで二人は川辺の石を拾い、後ろに向かって投げました。不思議なことに、デウカリオンが投げた石からは男が、ピュラーが投げた石からは女が誕生しました。 こうして、地上には再び人間が生まれ、世界は新たな時代へと進んでいったのです。

関連記事一覧 トップメニューへ 政治思想, 哲学, 宗教, 神話 哲学 ・ギリシャ哲学 ・哲学者, 政治学者 ・中国の哲学者 政治思想 ・社会主義・共産主義 ・功利主義 ・快楽主義 ・自由主義(リベラリズム) ・共同体主義 ・右翼,左翼,保守,革新 ・君主制, 共和制 ・イデオロギー, プロパガンダ 宗教, 神話 ・世界の宗教, 神話 ・旧約聖書 ・新約聖書 ・仏教 ・モーセの十戒, キリストの教え ・メソポタミア神話 ・エジプト神話 ・北欧神話 ・インド神話 ・中国神話 ギリシャ神話 ・神々の系図 ・天地創造 ・トロイア戦争, アキレウス ・オデュッセイア ・ペルセウス, アンドロメダ ・ヘラクレス ・イカロス ・テセウス ・ピュグマリオン ・プロメテウス, パンドラ ・デウカリオンの洪水伝説 日本 ・神道 ・十七条の憲法 ・五箇条の御誓文, 教育勅語 人物 ・ソクラテス, プラトン ・アリストテレス ・エウドクソス ・ブッダ ・孔子 ・ジョン・ロールズ ・ジョン・ミアシャイマー ・イマヌエル・カント