『星の王子さま』を読んだ感想



読んだ本のこと

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ジャーナリズム:00

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歴史:20

社会科学:30

自然科学:40

技術,工学:50

文学:90

公開日:2022/5/16    

■本、著者の情報
本著はフランス人の飛行士でもあり小説家である、アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ(1900-1944)の小説です。彼の代表作であり、1943年に亡命先のアメリカで出版されました。この時世界は第二次世界大戦(1939-1945)の真っ只中でした。 本著の中で、主人公が機体トラブルでサハラ砂漠に不時着する出来事は、1935年に起きた実際の著者の体験が反映されております。この時著者は3日間にわたる徒歩でカイロに生還しました。

著者は44歳の若さでこの世を去りますが、自由フランス空軍として偵察機に乗っているところにドイツ軍に撃墜されました。撃墜された機体は、その後1998年に地中海のマルセイユ沖の海域で発見されました。

<宮崎駿はサンテグジュペリの生き方、作品に影響を受けていた>

有名な話ですが、天空の城ラピュタの曲「君をのせて」の歌詞の一節は、本著をモチーフとしております。また「サン=テグジュペリ デッサン集成」の序文を、宮崎駿が手掛けるなどしています。

「君をのせて」の歌詞一部抜粋 作詞:宮崎駿

あの地平線 輝くのは どこかに君をかくしているから
たくさんの灯が なつかしいのは あのどれかひとつに 君がいるから


■解説・感想
私はこの本を20年くらい前に一度読んで、今回2回目の読書となります。本書は著者の親友である大人のレオン・ヴェルトにささげた本でありながら、本来の読者は子どもであると、冒頭に書かれています。 1回目読んだ時に感じたことですが、「著者の一番言いたいことはおそらくこういう事なんだろう」と思いつつも、そのことと進行される物語の関係性がいまいち分かりづらかったと記憶しており、 例えば王子さまがいろいろな星を回る下りは何の意味があるのだろうと思いました。2回目改めて読んだときに、ようやくその意味が少し分かる様になった※のですが、子どもが理解するのは難しいだろうなと思いました。

※ つまり様々な星に出てくる人物は、所謂「大切なものに気が付けていない、つまらない大人」の代表例を誇大化して表現している。確かに誰しもそんな一面を持っているとは思うが、それだけしかない人はいないのではないかと思いました。

また正直に言うと王子様がちょっと嫌な奴なのです。自分中心の少しわがままな性格を持っていて、それでいて大人はつまらない存在と見ている。 王子様のどこにそんな魅力があるのだろうと思うのですが、バラもキツネも主人公もその王子様に惹かれているという、ちょっと都合がよすぎでは?と思いました。

<なぜ星の王子さまが世界で広く愛されているか>

現在巷にあふれている自己啓発書やビジネス書などとは異なり、著者の本当に伝えたいことをシンプルに伝えている点と、"大切なことは何か"を気が付かせてくれるという点が、 当時の戦争のあった時代背景に非常にマッチしていたのではないかと思います。そして名著として受け継がれ今に至っているのかと思います。確かに強く胸に響く言葉が多くありました。

しかし、もし今の時代に本書が初めて出版されていたとしたら、たくさんの自己啓発書やビジネス書の一つとして埋もれてここまでのベストセラーになっていなかったのではないかなぁと思います。

<サン=テグジュペリの伝えたいこと>

① 大切なことは目に見えない
② 家も、星も、砂漠も美しいのは、目に見えないものが奥に存在しているから
③ 相手がとても大切なものになったのは、自分が相手のために時間を費やしたから

③は男性に強く表れる傾向のある感情なのではないかと思いました。女性は「上書き保存」、男性は「名前を付けて保存」とよく言われるように、 昔付き合った女性のことをいつまでも思ったり、昔使った道具やコレクションをいつまでも捨てずに持っているのは男性に多い気がします。女性は、これまでいくら相手に時間を費やしても、相手に興味を失ったら、すっぱり吹っ切れる傾向があると思います。

<私が良いと思ったセリフ>

・ ぼくはパンなんか食べないから小麦なんて、何の役にも立たない。だけど金色の麦を見ると、君のことを思い出すようになる。麦畑に吹く風の音も好きになるんだ。

・ ぼくの星がどこにあるのか教えられなくて、君にとってたくさんある星のうちの一つになる。そうしたら君は夜空の星を全部見るのが好きになる

<サンテグジュペリと日本>

本著が描かれたのは第二次世界大戦中という背景から、本著に出てくる星をむしばむ3本のバオバブの木は、ファシズムの象徴である、日本、ドイツ、イタリアであるとされています。 また街灯に光をともすのは、先ずはニュージーランドとオーストラリアから始まり、次に中国とシベリア、続いてロシア、インドとなる。との記載があり、日本の存在がないものとして描かれています。

ちなみにバオバブは、主にアフリカやオーストラリアのサバンナ地帯に生息する木で、まるで悪魔が引き抜いて逆さまに突っ込んだようだと言われるような外見をもっていることから、「悪魔の木」とも言われています。 本著の中でも悪の象徴として描かれていますが、実際には現地の人にとっては聖なる木ともされて、そんな邪悪な印象をバオバブの木に与えてしまったのは少し可哀そうかと思いました。




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