武田邦彦著 『早死にしたくなければ、タバコはやめないほうがいい』の感想



読んだ本のこと

情報科学:00

ジャーナリズム:00

哲学:10

歴史:20

社会科学:30

自然科学:40

技術,工学:50

文学:90

公開日:2020/7/4    

■本の情報
<作者> 武田邦彦
<発行日> 2012年11月 (竹書房)

以下黒字が本の要約で、緑字が私の感想/コメントです。

■本の論旨
① 以下の様な年代に対する喫煙率と肺がん死亡者数をとったグラフを根拠に禁煙すると肺がんが増えるというのが一番の主張。

 

② 喫煙率が高い国と肺がん死亡者が多い国を比較しても、それらは相関が無く、喫煙が肺がんのリスクを高めている事にはならない。

③ 何故こんなにも他人がタバコを吸う事を嫌悪しているのか。それは自分のストレスを『タバコ追放」という形で解消しようとしている様に見える。

■感想
「肺がんの増加とタバコの喫煙率には因果関係は認められない。仮に因果関係があったとしても、その影響は全体の肺がん死亡者数に比べ微々たるものである』 という主張ならば私も納得しますが、吸わないと逆に肺がんが増えるというのは違うと思います。

まず、科学的根拠が説明されていないという点。著者はこのグラフのみを根拠にしており、データには何ら疑いのない真実を表していると主張している。更にこのグラフに疑問を持つ人は「事実より先入観」が先立っているという。 科学者として訓練を受けた人はデータを見るときは先入観や自分の判断をすべて捨てて、タバコを吸う人が減ると肺がんが増えるとストレートに思う。との事。

しかしこのデータから言える事実は、「年代の経過に従い肺がん者数が増えている」という事と、「年代の経過に従い喫煙率が低下している」という事のみです。 もしこの二つに因果関係を見出すとしたら、科学的根拠に基づいた何かしらの自分の判断が必要なのです。それが無いまま結論付けるのは危ないです。 なおこのグラフに対してよく言われているのは、喫煙が肺がんの発生に影響が出るのは時点差があるので、喫煙が減って数十年経った時の肺がんの発生率を見なければいけないという事と、 年代を追うごとに高齢化が進んでいるので肺がん発生の絶対値は増えるのは当然であるという事ですが、この点についてはここでは詳しくは述べません。

あともう一つ私が違和感を持ったのは「禁煙すると肺がんが増える」と言っている点。禁煙というのはタバコを吸っていた人が吸うのを止めているという意味の筈で、 このグラフからは禁煙者を対象にしたグラフとは読めなかったのです。禁煙者としている理由はその後本を読み進めていると解るのですが、禁酒した人が死亡率が高くなるデータが示されており、 それとタバコの禁煙も結び付けたかったのだと思いました。

<タバコに過剰に反応し過ぎる世の中への批判に対しては同意>
もしかしたら著者はこれが一番言いたくて、タバコにそんなに害はないという事を伝えたかったのではないでしょうか。これは私も非常に同意します。私もタバコに対しては比較的寛容で(とは言っても私は吸いませんが)、 吸いたい人は吸えばいいし、何も関係ない人がとやかく言うのはどうかと思っております。そのとやかく言う為の理由に、タバコは害があるからという主張を繰り広げるのは間違っている、と私も思うのです。

最近は、タバコを吸った人はエレベーターすら乗るなという風潮が出てきております(ちなみに私の会社にはエレベーターにそういう張り紙がされています)が、「無害か有害かは関係なくとにかく臭いすら嫌」という人もいますが、 臭いが嫌というならコーヒーを飲んだら/ガムを食べたら/整髪料つけたら/汗を書いたらエレベーター乗るな、という事を他の人がいい出したらなんて思うのだろうと思います。




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