【考察】伊坂 幸太郎 著『マイクロスパイ・アンサンブル』



読んだ本のこと

情報科学:00

ジャーナリズム:00

哲学:10

歴史:20

社会科学:30

自然科学:40

技術,工学:50

文学:90

公開日:2023/7/25    

■本の情報 
<作者> 伊坂 幸太郎
<発行日> 2022年4月 (幻冬舎)

ネタバレを含みます。

■感想 

福島県の猪苗代湖を会場とした音楽とアートのイベント「オハラ☆ブレイク」が開催時に配布された短編小説を繋ぎ合わせたものです。 オハラ☆ブレイクに参加したバンドの曲の歌詞をところどころ引用しており、イベントに参加した人やバンドを知っている人にとっては嬉しい内容になっていると思います。 ただし話の内容自体はかなり薄味で、いい意味でいつもの伊坂節、悪く言えば新鮮味の無い内容でした。二つの話が並行して進み最後は繋がるという点も、いつもどおりの予想どおりでした。

なおオハラ☆ブレイクの由来は、オハラは「小原庄助」、ブレイクは「休息」を意味しており、 小原庄助は猪苗代町のある会津地方では馴染みの深い民謡「会津磐梯山」の中で登場する人物で、 昼前までだらだら眠り、起きれば酒を飲み、財産を失ったという伝説の男です。エージェント・オハラの名前もここからきているようです。

■考察 

① 雪のかたまり
舞台はミクロの世界とマクロの世界(現実世界)を描いており、それぞれの世界が繋がっている事を表していますが、 現実世界の最後に出てくる雪のかたまりは、一見 現実世界と思っていた世界も、実はその上にも大きな世界があるという事を意味していると解釈しました。

② 昔話をする女
冒頭に出てくる昔話をする女は、最後に出てくる高い塔に幽閉されていた彼女と同一人物である。 「彼」と塔から逃げている時に追っ手につかまりそうになったが、突風が吹いて追手が吹き飛ばされたために無事逃げることができた。 この時の突風はミクロの世界の少年のくしゃみであると思われる。すなわちエージェントのいるミクロの世界より更に小さな世界がある事を意味していると解釈しました。(「彼」は誰か不明)

③ 天野さんの不倫相手
天野さんの不倫相手は課長ですが、最初私は門倉課長の事かと思いましたが、別人です。(不倫相手の課長は、会社の予算を横領したことが発覚し遠くの県へ左遷された)

④ 話の舞台
猪苗代湖の天神浜オートキャンプ場が主な舞台となっています。表紙はキャンプ場から猪苗代湖と磐梯山を眺めた構図の絵になっています。



⑤ グライダー
松嶋は、彼女にグライダーみたいと言われ振られており、その後物語の中でエンジンを積んだ様な成長があるのか、あるいはグライダーでも良いという再認識があるのかと思ったのですが、 特にそういった伏線回収が無かったのが残念でした。




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