【感想】 「毒猿 -新宿鮫Ⅱ-」大沢 在昌 著



読んだ本のこと

情報科学:00

ジャーナリズム:00

哲学:10

歴史:20

社会科学:30

自然科学:40

技術,工学:50

産業:60

文学:90

公開日:2025/5/19    

■本、著者の情報
<作者>大沢 在昌
<発行日>1998年8月
<出版社>(株) 光文社

■登場人物

・鮫島:主人公。36歳。新宿署の防犯課に所属の警部。死亡した郭栄民の遺志を継いで毒猿と対決する。

・晶:鮫島の恋人。鮫島より十才以上年下。デビュー間近のロックバンド「フーズ・ハニイ」のボーカル。

・郭栄民:台湾の警部補、38歳。マフィアのボスの葉威と「毒猿」を追って新宿に来る。偶然現れた鮫島と出会い協力関係を築く。石和組のアジトに突入した際に撃たれ死亡。

・劉鎮生:毒猿(ドゥユアン)。郭栄民と同じ台湾陸軍特殊部隊に所属していた。楊と名乗り裏切った葉威を追って新宿に潜伏、新宿御苑で石和組と葉威を殺戮後、鮫島に捕られる。その後腹膜炎で死亡

・奈美:キャバレーで働いている。同郷である楊に心を惹かれ、毒猿の殺戮の助けを行う。石和組に捕らえられるも鮫島に救助される。


■感想

新宿鮫シリーズ第2作。今作では、主人公・鮫島はあえて脇役に回り、物語の中心は3人の台湾人に据えられている。 あとがきの解説では、鮫島を前面に出さなかったことが『毒猿』成功の最大の要因とされているが、個人的にはもう少し鮫島の活躍を見たかった。また晶の出番も少なかったのが残念である。

それでも内容は非常にスリリングであり、読み応えは十分あった。ただし、いくつかご都合主義的な展開が見られたのも事実だ。

第一に、郭栄民が活躍しそうで、実際にはそうでもなかった点が挙げられる。石和組のアジトに潜入したものの、名もなき下っ端のヤクザにあっさり撃たれてしまう展開はあまりに呆気なかった。 彼の意志を鮫島が継ぐという形で物語は進むものの、郭自身の描写にもう少し重みが欲しかった。

第二に、石和組がほとんど何の策もなく新宿御苑に乗り込んでいく点も不自然に感じた。暗闇で待ち受ける楊にかなうはずもない。せめて楊への交渉材料として奈美を人質にするなど、もう一工夫あって然るべきだったのではないか。

第三に、圧倒的な戦闘力を誇る楊を、鮫島が制してしまう展開にも疑問が残る。サブマシンガンを持っていながら、なぜか鮫島にだけは蹴りを入れ、結果的に武器を奪われるのは説得力に欠けた。

世間的には、本作の方が第1作よりも高い評価を得ているようだが、私個人としては、第1作の方により強く惹かれた。




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