伊坂幸太郎 PKの考察



読んだ本のこと

情報科学:00

ジャーナリズム:00

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歴史:20

社会科学:30

自然科学:40

技術,工学:50

産業:60

文学:90

公開日:2019/7/19    

■本の情報
<作者> 伊坂幸太郎
<発行日> 2012年3月 (講談社)

■解説ネタバレを含みます。
本の構成として、PK、超人、密使の3つに分かれており、それぞれが繋がっている様に見えるのですが、どういう関係になっているか分かりずらいと思います。そこで、私なりの解釈を記したいと思います。 私の想像も含まれるので間違っているかもしれませんが、ご容赦を。

<あらすじの解釈>
 まずゴキブリの話から、密使での出来事が超人とPKに繋がっていると解釈しました。超人がゴキブリが過去に送られていない(未来人が奪取した)世界、PKが過去に送られた(未来人が奪取していない)世界です。 密使ではゴキブリは過去に送られていないので、本書内に描かれている事としては密使に繋がっているのは超人だと思います。ではPKはどういう関係なのかというと、 未来人が来てゴキブリを奪った時点で世界が分岐してしまい、ゴキブリを奪えていない世界が存在した状態が描かれていると解釈しました。

<物語の時系列>
整理すると以下となります。

密使の、私と僕のいる年代
これは明示されておらず推測するしかないのですが、ヒントになるのは未来人が僕に対して、 2010年をひどく昔のことのように語っている(P208)、描写のところです。 "ひどく"昔ということに僕が違和感を感じているので、実際には2010年はそんなに昔ではないことが解ります。 実際には2010年が未来だった場合は"ひどく"という表現は使わず、単に昔である様な言い方に、僕は違和感を感じるべきです。

また注目するのはダイエット商品のキャッチコピーです。それは以下描写があり、3つの時代が同じであると推測できます。

<PKの2011年大臣のパート>
 "あなたの今までのやり方よりも、もっと簡単で、もっと効果的な" のダイエット食品の広告。(P59)

<超人の2011年三島のパート>
 "今までのあなたのやり方より効率的です"と書いたダイエット食品に三島がクレームを入れる。(P84)

<密使の2011年(推定)私のパート>
 "あなたの知っているやり方よりも、もっと効率的でずっとリーズナブルな"とのダイエット商品。(P151)

誤解するかもしれないのは、メモリーカードに入っていたCMのキャッチコピーです。

 "あなたの今までのやり方よりも、より効果的に、求めていた結果が得られます"とのダイエット商品(運動器具)(P214)

表現が似ているので未来の年代こそが2011年付近で、僕と私がいるのは2011年より前と一瞬思うかもしれませんが、 これはダイエット食品ではなく健康器具なのでこれは違うもので、やはり2011年ではないと思われます。

<人物>
私(密使)、本田毬夫(超人)、本田青年(超人)、予知能力を持った噂の殺人鬼(PK)
これらはすべて同一人物だと思います。それは以下描写から。

 ・「これが、こうなります」と私が説明を受けている(P150)、落下の記憶がうまれる(P212)
 ・本田毬夫は子供の頃マンションから落下。「これが、こうなります」と説明を受ける感覚があった。(P130)
 ・本田毬夫は三島の家を訪問している。(P132)
 ・居酒屋の男女の会話(P28)と、本田青年の三島に対する説明の下り(P78~)

本田青年がメールの内容を見て殺人を犯すのですが、メールは未来人からのメールだと思います。1つ気になる事として、 ゴキブリが送られている(未来人がゴキブリ奪取に成功していない)PKの世界にも、この本田青年がいるという事です。 つまり未来人はゴキブリが奪取できない場合に対しても対策を講じていることが解ります。

次郎君(PK)
大臣が子どもの頃、父親から次郎君の話を聞いていましたが、大臣の秘書が次郎君と同じ傷を持っています。 しかし次郎君は大臣の父親と同じ世代ですから、普通に考えたら次郎君と秘書は別人の筈です。 これに対して私は、次郎君も未来人と関わりを持っており、世界を救うために大臣の秘書となる使命を与えられ時代を行き来しているのだと解釈しました。

PKの作家の話に出てくる次郎君は、大臣の話の次郎君とは別人(大臣の父親の時代にはテレビゲームはない筈なので)ではないかという説もありますが、 私は同一人物だと思っております。それを言うなら2011年に過去にゴキブリを送る技術は現実世界には無いので、必ずしも現実世界どおりになっていなくても不思議はない。 敢えて別人にする理由もないと思います。

そしてこれは私の完全な想像ですが、次郎君が指をミシンで縫ったり歯ブラシがのどに刺さったりしたのは、過去に変化を与えたことによる悪い変化の被害者が次郎君であり、 テレビに吸い込まれたのは時代を行き来している比喩であると思いました。

三島(超人)
三島はスーパーマンであり、本田毬夫を暴漢から助けた"俺"と同一人物だと思います。それは以下描写から。

 ・三島は"スーパーマンは向こう側を透視できる。中の声も丸聞こえ"。などと言い、女風呂を覗く。(P83)
 ・毬夫を助けた後に、レストランの中を覗き声を聴いている。(P145)

更に、三島も未来人と関わりがあると思います。それは以下描写から。

 ・「君も闘っているのか」「俺たちは楽じゃない」と男(三島)が毬夫に言った。(P141)

これは耐性菌蔓延を防止するための闘いを示唆していると思いました。

大臣(超人)の大量殺人の理由
大臣は大量殺人を行う者だとされていましたが、この大量殺人は未来の耐性菌蔓延を引き起こす事象に大臣が関わっており、 そしてそれが誤報(P144)となったのは、ゴキブリを奪取することでそれが防げることになったからであると推測しました。 つまり、未来人は耐性菌蔓延を防止するために、いくつもの対策を講じようとしていたのが解ります。




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