『Think Clearly』を読んだ感想



読んだ本のこと

情報科学:00

ジャーナリズム:00

哲学:10

歴史:20

社会科学:30

自然科学:40

技術,工学:50

文学:90

公開日:2021/11/18    

■本の情報 
<作者> ロルフ・ドベリ
<発行日> 2019年4月 (株式会社 サンマーク)

■概要 ネタバレを含みます。緑文字は私の意見、補足になります。
最新の学術研究から導いた、よりよい人生を送るための思考法と銘打った書です。著者のこれまでの経験から、人生に役立つ思考法、行動が説明されております。 その中でも私の興味を引いたところを記します。

・考えるより行動しよう。なんでも柔軟に修正しよう
アメリカ大統領 アイゼンハワーは「計画そのものに価値はない。計画し続けることに意味があるのだ」といった。 仕事においても、計画を緻密に立てる事にこだわっても、どうせすぐ計画は変わってしまうので、やりながら計画を修正していけば良いと私も思います。また日本には「巧遅は拙速に如かず」という言葉もあります(もともとは中国の兵法書からきている)。 アジャイル開発の開発プロセスがこれに当たるのではないかと思いました。

・大事な決断をするときは十分な選択肢を検討しよう
「秘書問題」という最適停止問題を紹介。100人の応募者の中で効率よく優秀な秘書を採用できる確率が高いのは、100/ネイピア数=37人以降の人で、最初に現れた最も優秀な人を採用すればよいというもの。

この事例を引き合いに、恋人と別れて悲しんでいる彼女に対して著者は「10人でも20人でもいろいろな人と付き合えばよい。そうすれば自分にはどんな人が合うかが分かり、いずれ最適な人が見つかる」と慰めたが、彼女は力ない表情にほんのわずかな笑みを浮かべただけで、納得しなかったようだ。 という話を紹介し、更に、残念ながら十分なサンプル数を試さずに彼女と同じ様になってしまうことは誰にでもよくあると述べている。私は、悲しんでいる人に対してそんな慰めをしても、「そうだったのか。あぁ良かった」となる訳もなく、数学的には正しいかもしれないが、感情的には間違った慰め方だと思った。

・失った時間とお金は取り戻せないが、起きた出来事の解釈の仕方を変えることはできる
自分の銀行口座の一つを「寄付用口座」として設け一定のお金をプールしておき、交通違反の罰金や、財布を落とした時などの出費はここから出すようにすれば、痛い気持ちが和らぐ。 または、店やレストランで支払う金額に対して、所得税などの税金を考慮して5割増しの値段を計算し、実質的なモノの値段を常に想定することで、余計な出費の歯止めになる。

起きた出来事の解釈の仕方を変えることができる。という部分には賛同しますが、寄付用口座を設けることや、支払いの1.5倍の額を想定するということは私には難しそうです。 日本人の感覚に合わないのかもしれませんが、寄付用という事はもともと困っている人を助けたいという気持ちからくるもので、その寄付用口座から罰金を支払うと、困っている人への寄付が減るという事はいいのだろうか?

・節税のためならどんな場所に住んでもいいという人
税金を払って地域の美観を保てていると考えれば、税金も苦にはならない。節税のために住む場所を節約する人は、ケチ臭くて心が狭い印象を与える。

日本においても節税のためにシンガポールに移住する人がいますが、それがまさに典型なのかと思います。私は母国のために貢献することがそんなに嫌なのかと不思議に思います。

・反生産性とは
自動車によって移動効率が飛躍的に向上し、遠い場所でも短時間で到着できるようになった。ここで平均速度を計算してみると、およそ「50km/h」という数値がはじき出さされるが、車を購入維持するために必要な労働時間等を平均速度の分母に加えると、平均速度は「6km/h」になるという。 この様に、テクノロジーによって一見時間とお金を節約できているように見えても、実際にかかったコストを考慮するとその節約分は相殺されてしまう現象のことを反生産性という。車の例の他にも、Eメールやプレゼン用のパワポ資料、デジカメも反生産性の例として挙げている。

ならば車を持たず、労働をやめて、労働時間の代わりに徒歩による移動時間に費やすか?と問われたら、誰もyesとは答えないだろう。労働自体に自分の価値を高める効果があるのに対して、徒歩による移動はせいぜい体力をつけるだけで、自身の価値を高めることには繋がらないからである。 Eメールにおいても、自分が扱わなければならない情報量が格段に増えているのは事実であるが、生産性を低下させているわけではない。現代社会では生産と消費が激しく、一つのコンテンツを消費するスパンがどんどん短くなってきている事が問題だと言うならば、そうかもと思うかもしれない。

・物を買うことに投資するよりも、経験することに投資せよ
高級車を買っても、その嬉しさは一時でしかない。それより、良い本を読む、家族とのお出かけ、旅行など経験に投資した方が、ずっと質のいい投資である。

・人が幸せを感じるかどうかは所得の額によって決まるのではなく、目標を達成できたかどうかで決まる
幸せにかどうかは、目標を達成したかどうかが全てではないと思われますが、幸せに影響を与えている一つの要因と解釈しました。

・積荷信仰(カーゴ・カルト)
戦時中、太平洋の島々の原住民は、飛行機に乗ってやってきて大量の物資を提供していく米軍の姿を見て、戦争が終わった後も飛行機に乗った米軍を招き寄せようと、 滑走路と藁で作った実物大の飛行機を作り、米軍の真似をして祈りをささげたという。ここから、形だけまねても無意味であるという言葉である「積荷信仰」が生まれた。 現代の積荷信仰の例として、マークザッカーバーグにあこがれパーカーを着て仕事をする人など。確かに、中身の伴わない形だけ真似るのはよくありませんが、「形から入る」のも時には重要なことだと思います。

・内なる成功こそが真の成功
物質的な成功を手に入れられるかは、完全に運によって決まるため、真の成功とは呼べない。自分の心の充実や平静さを手に入れることが真の成功であり、幸福な人生を送るための有効な手段である。 自分の心の充実や平静さを手に入れるためには、自分が自分の人生をどう解釈するかということ、自分の思考だけは誰からも奪われることができないという「精神的な砦」を認識することであると、本書を通して私は理解しました。

■感想
著者の主張に納得させられる部分も多かったですが、本書は著名人の言葉を引用することで、著者自身の考え/主張を説明、補強するというパターンが多かったです。そのため、ビジネス書/自己啓発書のよくある内容を寄せ集めたという印象を受けました。悪く言えば著者オリジナルの発想が少ないという印象。 しかしネットを見てみますと、本著の引用が結構多いことが分かりました (中には引用元を明記せず、ほとんどそのままの文章にもかかわらず、管理者オリジナルの言葉の様に発言されているケースもあった)。という事は、本書を読んで影響を受けた人がいる、あるいは本書に説得力があるという事の裏返しかもしれません (実際に日本で20万部以上発行したのヒット作品ですので)




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情報科学:00

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