ハンス・ロスリング著『FACTFULNESS』の感想



読んだ本のこと

情報科学:00

ジャーナリズム:00

哲学:10

歴史:20

社会科学:30

自然科学:40

技術,工学:50

文学:90

公開日:2020/2/16    

■本の情報
<作者> ハンス・ロスリング
<発行日> 2019年1月 (日経BP社)

■本の主旨
世界について間違った知識を持っている人が非常に多く、世界はみんなが知っているより酷いことにはなっておらず、 むしろどんどん良くなっているだと述べている。その一つの例として極度の貧困層の減少があげられる。 先進国の人たちはアフリカはどこも貧しい国で質素な暮らしをしていると未だに思い込んでいるが、それは大きな間違いであり、 アフリカにも豊かな国は増えており、「貧しい国」と「豊かな国」という様に二分化できるものではないという事である。

では何故その様にに間違った知識を持った人が多いのか、それは子どものころに教わった知識のアップデートが出来ていないのだと当初筆者は思ったのだが、 それは主原因ではなく、たどり着いた結論は「人は物事に対してドラマチックな見方をする」ために、思い込みが過ぎてしまうから。そしてその原因は脳の機能にあり、以下のような本能が働いてしまうからだという。

➀分断本能 ②ネガティブ本能 ③直線本能 ④恐怖本能 ⑤過大視本能 ⑥パターン化本能 ⑦宿命本能 ⑧単純化本能 ⑨犯人捜し本能 ⑩焦り本能

■感想
世界がどれだけ間違った知識を持っているかというのを思い知らされ、なるほどと納得する面もあった一方、いくつかの疑問も生まれたのでそれを書き留める。

<納得した点>
➀ グラフの外側はずっと直線でそれが続くと思ってしまうという事。グラフの形にはS字カーブや指数曲線、正規分布形などたくさんあって、自分自身それらグラフを勉強の時には見ている筈なのに、 日常生活の中では確かに直線で考える傾向があるかもしれない。

② 「悪い」と「良くなっている」は両立するという事。見方を変えるだけでポジティブにもネガティブにも捉える事ができるという例だと思う。

③ 世界は平和になっているといくら言っても、争いの当事者や現在苦痛を味わっている人にとっては何の慰めにもならないという事。まさにそのとおりだと思う。

④アフリカを大雑把に一つの問題として捉えがちになる例として、アフリカの一つの国で病気が流行ったら、アフリカ大陸全体が危険であると思ってしまう事。

<疑問、反論>
➀ 世界が良くなっている事実をたくさん挙げられていたが、逆に悪くなっている事実は何か。そこには触れられていなかった。

② 世界の事実に関する問題に関して、正答率の低さは、問題の出し方の曖昧さによるものが無かったのだろうか。例えば、低所得層の定義を何と置いていたのか。 回答者視点の相対比較で捉えていたのなら、この正解率でも納得がいく。

③ 必要以上にネガティブに捉えてきたからこそ、人類は発展できたのではないか。逆に、世界についてネガティブに考えすぎる事のデメリットは何だろう。 これだけネガティブな知識を植え付けられていたとしても、毎日悲しみに暮れてたり、誤った義憤に駆られている訳でもない。これくらいの不安感が有った方が良いのではないか。

④ 何をもって世界は良くなっていると考えているのだろうか。世界の貧困層が減り、平均寿命が延びているのは確かに良いことであるとは思うが、それで本当に人は幸せと感じ、精神的に豊かな生活を送っているのだろうか。そのことに言及されていない。

⑤ チンパンジー押しが過ぎる。皮肉なのは解った上で敢えて反論すると、チンパンジーより正解率が低い事と、チンパンジーと人間の知能の優劣は無関係なので、チンパンジーを引き合いに出されても悔しくとも何ともないのである。 仮に正解率の低さが知能の低さを表しており、その危機的状況を本気で伝えたいのならば、ナメクジを引き合いに出した方が良いはずである。(ナメクジの正解率もおそらく人間より高い)




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