島田荘司 最後の一球



読んだ本のこと

情報科学:00

ジャーナリズム:00

哲学:10

歴史:20

社会科学:30

自然科学:40

技術,工学:50

文学:90

公開日:2019/7/14    

■本の情報
<作者> 島田荘司
<発行日> 単行本:2006年10月 (原書房) , 文庫本:2009年5月 (講談社)

 御手洗潔シリーズの25作目である。

 私が読んだのは文庫本の方です。

■感想 一部ネタバレを含みます。
筆者の言葉として、『この作は、無数の御手洗作品に埋もれて標準作と思われているだろうけれども、自分としては、代表作の一つと言いたいくらい好きな作品だ』という。 その理由は、『生涯を二流で終える選手の、人知れぬ生涯ただ一度の煌めき。そんなあり方が最も好きだから』

私もその考え方にとても共感しました。本書タイトルにもある最後の一球、これはピッチャー竹谷とバッター武智の最後戦いの一球を意味しているのかと初めは思いましたが、 実は最後の一球は、竹谷が20年の野球人生のすべてをかけて、武智のため、たくさんの債務者のために花瓶に投げた一球のことでした。 竹谷の、永久に肩が壊れても良いという気持ちで投げたこと、武智の、君は僕の本当の友達と思った、自分が一番苦しい時に君は助けてくれた。との思い。私はそこに最も感動を覚えました。

自分の全てを投げうって相手のために尽くす。それは現実にもよくある事なのではないかと思います。例えば、溺れる子どもを助けようとする親、仮にそれが実らなかったとしてもその姿行為には涙します。

ただこの本で一つだけ気になったことがあります。それは武智が野球賭博を行った理由についてです。父親の借金の一億数千万(契約金などあてても残った額)を肩代わりする為に野球賭博したのですが、一億数千万なら武智の収入で いずれ返済できたのではないかという事です。

本書の出来事の1993年当時のプロ野球選手の年俸として、落合博満の2億~3億が最高でした。ただ落合も10年以上選手を務めてようやく達成した額であるという事と、 武智がここまでの選手になるかどうかは定かではなく、またプロ野球選手の初年度の年俸は及そ1000万~2000万程度なので、やはり一億数千万をすぐに返済するため(このひと振りだけで憎い道徳ローンと永久に手を切れると武智が言及)には、 やはりやむを得ない選択だったと私は解釈いたしました。




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