【感想】 「新宿鮫 -THE SAINT IN SODOM」 大沢 在昌 著



読んだ本のこと

情報科学:00

ジャーナリズム:00

哲学:10

歴史:20

社会科学:30

自然科学:40

技術,工学:50

産業:60

文学:90

公開日:2025/4/18    

■本、著者の情報
<作者>大沢 在昌
<発行日>1997年8月
<出版社>(株) 光文社

■登場人物

・鮫島:主人公。36歳だが実際より十才近く若く見える。新宿署の防犯課に所属の警部。

・晶:鮫島の恋人。鮫島より十才以上年下。デビュー間近のロックバンド「フーズ・ハニイ」のボーカル。

・桃井:鮫島の上司。事故で家族を失って以来、「マンジュウ」と呼ばれるほど精力を失うも、木津から鮫島を助ける。

・木津:銃密造の天才。鮫島に追われていた所を逆に捕まえ鮫島を殺そうとするも、桃井に殺される。

・香田:鮫島の同期で警視を務める。鮫島に敵対心を抱いている。


■感想

いわゆるハードボイルド小説である本作。主人公の鮫島警部は、警察組織に対する問題意識を抱いており、警察内での縦と横の繋がりを持たず、常に単独で捜査を行っている。 しかしその実績は記録的な検挙率を誇り、音もなく近づき突然襲い掛かってくる姿から、いつしか「新宿鮫」と呼ばれるようになった。

また鮫島は、警察機構を揺るがしかねない内容の、かつての同期が残した遺書を秘かに抱えている。 これを巡り、対立する警察上層部それぞれが自派に取り込もうと圧力をかけるが、鮫島はこれを頑として拒否。 結果、周辺からも「奴は危ない」「いつか殺される」と囁かれ、ますます孤立していく。そして鮫島は、この爆弾を不発のまま葬るつもりはなく、いずれ爆発させようと胸に秘めている。

この伏線は本書内では回収されず、続編への期待を抱かせる仕掛けとなっている。またストーリー展開も息をのむ展開が続き、読者を惹きつけるが、気になった点もいくつかあった。

ひとつは、鮫島が単独で木津の逮捕に踏み切った場面。舟で木津を運んでいた友人の富川に、木津に密告する隙を鮫島が与えてしまった点は、素人目にも不自然に感じられた。 もうひとつは、鮫島が絶体絶命の状況で、上司の桃井が助けに現れる場面。助けに来るまでの時間があまりに早すぎるのと、桃井の性格からしてそもそも助けに来ること自体がやや都合の良すぎる展開に思えた。

さらにもう一点気になったのは、警察マニアの「エド」の存在である。彼の登場が事件に直接関わるわけでもなく、ストーリー上、必ずしも必要とは感じられなかった。 というのと、鮫島は恋人の晶の存在を警察内部に知られないよう細心の注意を払ってきたはずだが、最後にあっさりと警察関係者に彼女との関係を見せてしまったこと。 秘密にしたい筈なのに迂闊過ぎないか?と思いました。

■THE SAINT IN SODOMの意味

The saint in Sodomの日本語訳は「ソドムの聖者」、ソドムとは旧約聖書に出てくる堕落と背徳の都市のことです。 つまり、新宿を腐敗した街ソドムになぞらえ、その中で孤独に正義を貫こうとする鮫島を聖者として描いています。




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