【まとめ】 ソクラテスの弁明, プラトン 著



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公開日:2024/3/25    

■本、著者の情報
<作者>プラトン, 納富 信留 訳
<原題>Apologia Sōkratis
<発行日>2012年9月 (株) 光文社

■あらすじ
BC399年古代ギリシャ、ソクラテスは「ポリスの信ずる神々を信ぜず、神霊(ダイモーン:デーモンの由来)を導入し、若者を堕落させる不正を犯した」罪として、メレトスから告発を受ける。 本書は裁判時のメレトスらの求刑弁論に対する、ソクラテスによる弁明を記している。

裁判の流れは、ソクラテスの弁明後の無罪/有罪を決める投票の結果、有罪判決となり、その後刑罰を決める投票の結果、死刑判決となる。 (刑罰は、原告が求めた刑罰と、被告が提示した刑罰のどちらかを投票で選択する規則となっている。メレトスらは死刑を求刑したのに対し、ソクラテスは最初プリュタネイオンでの食事を提示しようとしたものの、最終的には罰金を提示した。 このプリュタネイオンでの食事が裁判員の心証を悪くしたものと思われる)

なお、通常は死刑はその日のうちに行われるが、ちょうどその時期はアポロン神への祭祀があったため、死刑が1か月延期された。

■ソクラテスの主張

<無知の知>
ある日ソクラテスは、友人のカイレフォンより「ソクラテスより知恵のある者はいない」というデルフォイの神託を告げられる。 しかし知者などではないと自覚していたソクラテスはこれに戸惑い、神託の意味を探るため「知者」とされていた人達を訪ね対話を重ねた。 しかし「他の多くの人間たちに知恵ある者だと思われ、自分自身でもそう思い込んでいるが実際にはそうではない」、 そして「この人たちは知らないのに知っていると思っているのに対して、自分は知らないことを知らないと思っている。その点でこの人よりも知恵がある」という事をソクラテスは発見する。

なお日本では「無知の知」つまり「知らないことを知っている」という意味で解釈さられているが、実際には「知らないと思っている」という慎重な言い方をソクラテスはしていることに注意すべきであると、本書では述べられている。

<死への恐怖>
ソクラテスは、死を恐れるということは、知恵がないのにあると思い込む事に他ならないと述べている。

死というものを誰一人知らないわけですし、死が人間にとってあらゆる善いことのうちで最大のものかもしれないのに、そうかどうかも知らないのですから。 人々はかえって、最大の悪だとよく知っているつもりで恐れているのです。


<魂への配慮>
ソクラテスにとって、魂が優れたものであることが徳に他ならず、徳があって初めて人間の幸福に結びつくと考えています(福徳一致)。

世にも優れた人よ。あなたは知恵においても力においても最も偉大で最も評判の高いこのポリス・アテナイの人でありながら、恥ずかしくないのですか。 金銭ができるだけ多くなるようにと配慮し、評判や名誉に配慮しながら、思慮や真理や魂というものができるだけ善くなるようにと配慮せず、考慮もしないとは。


<善い人間のなす行為>
真実を語ることで多くの敵を作ってしったとしても、ソクラテスはそれが最善であるならば、死でも他のどんなことでも恥に優先して斟酌することなど断じてせず、危険を冒してでも実行するべきであると考えている。

「それで君は、ソクラテスよ、恥ずかしくはないのかね。今にも死ぬかもしれない危険をもたらす、そんな生業に従事していて」と。
私はその人に対して、正しい言論でこう反論しましょう。
「いや、困った人間ですね。あなたが言っている事は立派ではありません。もし、何か少しでも役に立つ人間が生きるか死ぬかの危険など斟酌すべきだと考えているのでしたら。 むしろ、何か行動をするときは、そんな事だけを考えるのではなく、正しいことを行うのか、それとも不正を行うのか、よい人間のなす行為か、それとも悪い人間のなすことなのか、それを考慮すべきです」





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