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■本の情報
<作者> 本川 達雄
<発行日> 1992年8月 (中央公論社)
ネタバレを含みます。緑字が私の感想/コメントです。
■要約
体の大きなゾウは体の小さなネズミに比べ寿命が長いが、生涯の心拍数はゾウもネズミも大差はないという。
ゾウとネズミの感じる時間の長さはそれぞれ異なっており、ネズミの生きる数年の間で、ゾウの生きる時間と同じ位の時間をネズミは体感している※というのが本題である。
詳細は以下のとおり。
・時間は体重の1/4乗に比例する。例えば体重が16倍になると、時間の長さは2倍になる。
・この法則は時間が関わっている様々な現象に広くあてはまる。例えば、寿命を始めとして呼吸をする間隔、心臓の脈拍など。
・このような時間間隔を物理的な時間と区別し、生理的時間と呼ぶ。
・寿命を心臓の鼓動回数で割ると、哺乳類は生涯の脈拍数は約20億回という計算になる。
・物理的時間が短いからといって、一生を生き切った間隔はゾウもネズミも変わらない。
・標準代謝量は体重の3/4乗に比例する (クレイバーの法則)
※ ネズミは時間を早く感じているか、ゆっくり感じているか
例えば物理的時間の1年間に10年分の時間経過を感じたとしたら、時間の経過を早く感じているのか、ゆっくり感じているのか、どちらになるでしょうか。
1年の間に10年分の年を取ったとするなら、時間の経過が早いと思うかもしれませんが、これは観察者の人間視点の考え方です。
当人にとっては1年でも10年分の経験をしている様に感じているので、ゆっくり感じているという見方になります。
■感想
上記主張は本書の前半で述べられ、後半部分は生物に関する一般的な学問について述べられており、
本題である「ゾウの時間 ネズミの時間」とは直接は関係のない話がされています。ただ読み物としてはとても勉強になるものでした。
生涯の心拍数はどの哺乳類でも約20億回という事ですが、人間には当てはまりません。人間の寿命が約80年で心拍数が70回/分とすると、生涯の心拍数はおよそ25億回となります。
また仮に人間の生涯の心拍数が25億回として、例えば運動などによって心拍が早まったら早死にするのかというと、そうであるとは述べられておりません。
個人的には、心拍数が上がると心臓に負担がかかり、心臓病等のリスクの観点から寿命が早まると考えております。詳細はこちらで説明。
体重に比例し時間の経過が異なることは人間にも当てはまる場合があります。例えば子供の頃は時間が経つのが長く感じるのは、この法則に当てはまっていると思います。
一方で、肥満の人が長生きできるかといえばそうではなく、むしろ心拍数は高い傾向にあり、上記説明のとおり早死にのリスクが高まります。
ネズミの生理的時間はゾウと変わらないという事ですが、それでもゾウの様に心拍数が遅く、寿命が長い方を私個人的には選びたいです。
生きている時間が短いと、自分へのインプット情報も少ないですし、できる事も限られてしまいます。
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