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■本の情報
<作者> 橘 玲
<発行日> 2019年1月 (新潮新書)
ネタバレを含みます。緑字が私の感想/コメントです。
■感想
前作「言ってはいけない」から約3年たっての本作の出版です。私が読んだのが2024年。この本の影響なのかは解りませんが、世間に十分広まっている内容だったので私もほとんど知っている内容でした。
一方、矛盾のある説を並べたり、結局どっちなんだという、結論が分からない状態で締めくくられている説明が随所に見られ、もやもやする事も多かった。
その一例として、IQが高い東アジア地域においては日本のいち早い近代化は単なる偶然で、日本人だからといって、中国、韓国、朝鮮人だからといって「特別」なことは何もないという説明に対し、
日本人がセロトニン運搬遺伝子のS型の所有率が最も多く、日本人は世界で最も「自己家畜化」が進んだ民族であるという説明が矛盾している。
S型が多ければ多い程、将来に不安を持ち必死に勉強するという理屈ならば、日本人がいち早く近代化した要因になるのではないのだろうか。
■印象に残ったこと
・日本人の1/3以上が小学校3~4年生の数的思考力しかなく、日本語が読めない。
・同性愛は遺伝の影響を受ける。それでも同性愛が自然淘汰されないのは、同性からも異性からも魅力的な遺伝子を持っているということで、多産になりやすいから。
魅力的な人が多産であるという因果関係が不明なのでこの説は疑わしいと思う。
・年齢と共に遺伝率が上がり、子どもの時に受けた教育の影響は少なくなっていき、生得的な水準に回帰する。
・IQのばらつきは女性より男性の方が大きく、男性は極端に頭の良い人と悪い人が女性より多く存在する。
・たまたま今の世の中が知能高い人が有利になるような社会になっているだけである。
・アジアの地域のIQが高いのは、稲作の普及によって人口が増加したからである。
人口が増えるとIQが高くなるのは複雑な社会的環境へ適応するためである(参照:社会脳仮説)。またなぜアジアで稲作が盛んになったのは、季節風によって降水量が多いからである。
・インド出身のIQが高い人たちはバラモン出身である
・IQの高い国は信仰心も低くなる。
・日本人の持っている「下戸遺伝子」は大陸由来(中国南部)。東北地方や九州南部にお酒が強い人が多いのは縄文人由来。
・石器の登場によって、肉体的な強さの優位性は失われ、極端に暴力的な人や自分勝手な人は排除されていった。その結果、共同体の秩序を乱さないようにする人が生存競争で優位になり、これが道徳の起源となった。
・セロトニン運搬遺伝子がS型をもつ人は、悲観的なことだけではなく、楽観的なことにも強く反応する。これはS型の人は感受性が敏感で、L型の人は鈍感であることを表している。
・人間はサルのネオテニー(幼児成熟)から進化した生物で、更に東アジア人は人間のネオテニー化が進んでいるという。つまり東アジア人の姿は人間の進化の先を示唆していると考えられる。
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