竹田恒泰著『これが結論!日本人と原発』の感想



読んだ本のこと

情報科学:00

ジャーナリズム:00

哲学:10

歴史:20

社会科学:30

自然科学:40

技術,工学:50

文学:90

公開日:2021/7/11    

■本の情報 
<作者> 竹田 恒泰
<発行日> 2012年3月 (小学館)

■概要 ネタバレを含みます。緑文字は私の意見、補足になります。
竹田氏が述べる、原発が不要という根拠をまとめます。

① 原発がないと電力が足りなくなる、または電力代が高くなる。ということはない。
2012年時点で原発54基のうち3基しか稼働していないが電力は足りている(2021年現在では9基の原発が稼働しており、全て西日本に集中している。関東圏内においては原発無しでも電力は足りている)。 また、仮に稼働中の原発が緊急停止したとしても、原子力発電と同等の出力を持つ火力によるバックアップ電源が確保されているので、電力が足りなくなることはない。

その上で化石燃料への依存を減らそうと思ったら、GTCC(ガスタービン・コンバインドサイクル)という最高性能の新型発電設備を利用すればよい。 これは、使用する燃料は天然ガスで、国産の最新のものは熱効率が61%もある(2021年現在では約64%の物もあります。また石油を使った火力発電所の熱効率は約46%です)

また、天然ガスと原発の発電コストを比べると原発の方が安いと試算されているが、ここには送電コストや高レベル放射性廃棄物の処理費用が考慮されておらず、これを考慮すると天然ガスも原発も費用はほとんど変わらないと述べている。 私が確認した最新の発電コスト状況はこちらで説明しています

② 核兵器を持つためには原発が必要。ということはない。
核兵器の原料となるプルトニウムは、ウランを核分裂させる過程で生成(詳細はこちらで説明)されており、すでに十分な原料はある。さらにプルトニウムの純度を高めるためには高速増殖炉(常陽)が1基と再処理工場あればよい。

③ 原発は二酸化炭素をださない。ということはない。
核燃料の原料であるウランはウラン鉱山から採掘される。その際に使う重機は石油で動いている。また、ウラン鉱石から燃料として使える状態にするには、精錬、転換、濃縮、再転換、成型加工などの工程を経てようやく燃料になるが、それらの工程は燃料を必要とする。 また燃料の輸送も、原発を建設するのも、放射性廃棄物を処理、管理するのも全て石油が必要である。

石油文明の先に原子力文明があると考えるのはただの幻想にすぎず、石油で行っていたものを全て原子力で代替できるようにならなければ原子力文明とは言えず、石油がなければ原子力が動かせれないのであれば、それはあくまで石油文明の一形態であるという。

またそもそも、本当に温暖化しているのか、温暖化の原因は本当に二酸化炭素なのか、更に温暖化の原因が二酸化炭素だとしてもそれは人間の排出した二酸化炭素なのかを慎重に判断する必要がある。 例えば、二酸化炭素濃度と気温は相関があることを示すグラフを見たことがあると思うが、気温が高くなったから(海水に蓄えられている二酸化炭素が放出されたことにより)二酸化炭素濃度が高くなったのか、二酸化炭素濃度が高くなったから気温が高くなったのか、因果関係の主従については学会でも意見が対立している。 グラフをよく見ると、確かに気温の方が先行しているようにも見える。

<原発が日本にふさわしくない3つの理由>
上記に加え、原発が日本にとって不要な(ふさわしくない)理由を3つ挙げております。

④ 原発の安全は労働者の死によって支えられている
⑤ 国土が失われた
⑥ 原子力は人間の手に負えるものではない
核分裂のコントロールの難しさや、1万年以上という人間の有史より長い期間に及ぶ放射性廃棄物の処理期間を考えても、人間の手に負えるものではない。

■感想
原発事故を目の当たりにしたとき、もう原発はいらないと思ったはずが、それから約10年たった今、原発に対する恐ろしさの感情が薄れている人も多いのではないでしょうか。 原発事故の教訓を生かして安全対策をしっかりやっている筈だからもう大丈夫だろうと。私はこの本を読んで、改めて原発の恐ろしさと当時の悲しみを思い出し、原発は不要であるという著者の考えに賛同いたしました。 原発をやめるのに私が一番納得性が高いと思ったのは、二度と原発事故が起きないという保証はないということ(テロや戦争でも原発事故が起こる可能性がある)、原発事故が起こった時の被害が間尺に合わないということです。

原発事故の被害を最小限にするため言葉どおり命を懸けて職務をまっとうされた方や、天皇陛下(上皇陛下)が国民のことをご心配なされていたことや、当時国民が離れていないのに先に東京を離れることはあり得ないと仰られていたことなど、 それを思うと、原発は持つべきではないのだと思いました。




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