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■本、著者の情報
<作者>横溝正史
<発行日>1951年5月
<出版社>講談社
■犬神家の家系図

■あらすじ
昭和二十年代のある年の二月、那須湖畔の本宅において犬神佐兵衛は、裸一貫から興した製糸業によって築いた莫大な財産を残し家族に看取られて世を去った。
遺産の分配および事業の承継者を定めた遺言状は、一族が一堂に会した場で開示されることとなり、長女松子の一人息子・佐清の復員を待つことになる。
佐兵衛は生涯正妻を持たず母の異なる三人の娘はいずれも婿養子を迎え、それぞれに一人の息子をもうけていたが、相互の確執は深く家中には常に不穏な空気が漂っていた。
同年十月、私立探偵・金田一耕助は犬神家の内情に不穏な兆しがあるとの報せを受け、単身那須へ赴く。
依頼主は顧問弁護士の事務所に勤める若林であり、遺言をめぐる動きに不審を抱いていた。那須ホテルに滞在した金田一は、湖上で野々宮珠世の乗るボートが沈みかける現場に遭遇し、下男の猿蔵とともに彼女を救出する。
ボートには意図的に穴が開けられており、珠世はすでに複数回命を狙われているという。やがて若林は毒殺体となって発見され、遺言状の内容を密かに探ったことが原因とみられた。
事態の重大さを悟った顧問弁護士の依頼により、金田一は遺産相続の場に立ち会うこととなる。
やがて復員した佐清は、戦傷により顔を覆うゴムマスク姿で現れる。開示された遺言は、犬神家の家宝「斧・琴・菊」を珠世に与え、その代わりに三人の孫息子の中から婿を選ばせるという異様な条件を含んでいた。
さらに珠世に異変があれば、遺産は分割され、かつての愛人の子である青沼静馬にも相続権が及ぶとされた。この内容は三姉妹の怒りと嫉妬を激しく煽り、家中の対立は一層激化する。
そして惨劇が始まる。佐武は生首にされ「菊」に見立てて晒され、続いて佐智もまた「琴」に見立てられた形で殺害される。
奇怪な見立て殺人の連鎖の中で、三姉妹はかつて佐兵衛の愛人・菊乃に加えた残虐な仕打ちと、その子にまつわる因縁を告白する。
それは家宝と血筋をめぐる執念が生んだ、過去からの呪いに等しいものであった。こうして犬神家の血に絡みつく怨念は、現在の殺人へと連なっていくのである。
やがて十二月十三日の朝、橘署長からの急報で起こされた金田一は凍結した湖面に第三の惨劇を目撃する。
湖上には、腰から下を突き出した異様な姿の死体が浮かんでおり、それは仮面の男・佐清と見られた。
これは「佐清」の死体は半分水に沈んでいたため、ひっくり返して沈んだ部分を「ヨキケス」→「ヨキ(斧)」となり、犯人は死体で斧を示したのである。
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しかし佐清と思われていたこの死体の指紋は、以前に手形として採取されていた佐清のものと一致せず、この死体が佐清ではないことが判明する。
その最中、本物の佐清が現れ、珠世を絞殺しようとするが未遂に終わり雪山へと逃走する。追い詰められた佐清は拳銃で自殺を図るも阻止され、ついに確保されるに至った。
金田一はこの時点で事件の全貌を解明しており、佐清は一連の殺害を自らの犯行であると自供する。
しかし金田一はこれを否定し、真犯人は松子であり佐清の供述は彼女をかばうための虚偽であると断じる。
やがて松子は犯行を認め、若林、佐武、佐智、さらに佐清になりすましていた静馬を殺害したことを告白する。
だが、もし佐清が当初から正体を明かしていれば、珠世は佐清を選んでいたはずであり、松子の一連の殺害は結果的に不要なものであったことが明らかとなる。
佐清自身は殺人には関与していなかったものの、事後共犯および拳銃不法所持の罪で逮捕される。一方で珠世は、佐清に「斧・琴・菊」を託し、彼の出所を待ち続ける決意を示す。
そして最後に松子は、小夜子の胎内に佐智の子が宿っていることを明かし、その子は竹子と梅子にとっての孫にあたるため、誕生の暁には遺産の半分を与えてほしいと願い出る。
それがせめてもの罪滅ぼしであった。
その直後、松子は若林殺害に用いたのと同じ毒をあおり、自ら命を絶つ。かくして、この一連の事件は幕を閉じた。
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